2009 Fiscal Year Annual Research Report
手術症例における適合血輸血の実施状況とその後の溶血反応に関する全国実態調査
Project/Area Number |
19591803
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
入田 和男 Kyushu University, 大学病院, 准教授 (80168541)
|
Keywords | 手術 / 大量出血 / 緊急輸血 / 溶血性副作用 / 不規則抗体 / 放射線照射 / 輸血後移植片対宿主病 / 高カリウム血症 |
Research Abstract |
平成19,20年度に引き続き,病床数500以上の基幹病院と考えられる麻酔科認定病院を対象として,2008年の1年間に手術室で実施した異型適合血輸血に関して,アンケートによる実態調査を行った.384施設中206施設から回答があり,異型適合赤血球輸血は32症例が報告された.異型適合赤血球輸血が原因と考えられる溶血性副作用は報告されなかった. 手術室で5,000ml以上の大量出血が発生する確率は28.6/1万症例であった.これらの症例の術後30日時点での予後は死亡15.9%,後遺症残存14.1%であったが,未交差同型血輸血ならびに異型適合赤血球輸血の実施率は各々7.4%,1.7%であり,平成19,20年度調査と同レベルに止まった.今回は,不規則抗体に起因する溶血反応についても調査したが,発生は報告されなかった. 未照射赤血球製剤を購入している施設が13.2%を占めたが,緊急時に未照射のまま輸血することもありうると回答した施設は6.3%あった.ただし,輸血後移植片対宿主病の発生は報告されなかった.一方,輸血が原因と考えられる高カリウム血症が5,000ml以上の大量出血症例の16.5%で,さらに心停止の4.2%(5,000ml以上の大量出血症例の0.3%)は出血よりも高カリウム血症が原因であった可能性が高いと報告された. 関係者が緊急輸血に躊躇する理由の一つとして,副作用に対する不安が挙げられる.緊急輸血に伴う溶血性副作用の発生頻度は,大量出血になった場合に予後不良となる割合よりも低いことが改めて示唆されたことから,本調査の結果を緊急輸血普及につなげる必要がある.一方,緊急時の未照射血の使用に関するコンセンサスの確立,ならびに照射血に起因する致死的高カリウム血症に関する注意喚起も必要と考えられる.
|
Research Products
(8 results)