Research Abstract |
500床以上の麻酔科認定施設の麻酔科を対象として,手術室で平成18年から平成20年の3年間に5,000ml以上出血した症例に対して実施された緊急輸血の実態を,アンケート形式で調査した 計1,892,380症例の麻酔科管理症例のうち,5,000ml以上出血した症例は3,748症例であり,その後30日以内に死亡の転帰をたどった症例は3年平均で19%であった.5,000ml以上の出血症例に対する未交差同型赤血球輸血ならびに異型適合赤血球輸血の実施率は各々7.8%,1.4%であり,経年的な変化は認められなかった.平成19年4月に日本麻酔科学会と日本輸血・細胞治療学会は,緊急時には異型適合血輸血を積極的に実施することを推奨した「危機的出血への対応ガイドライン」を公表したが,手術室における緊急輸血対応はその前後で変化していないことが明らかとなった 同じ時期に,出血量にかかわらず異型適合赤血球輸血が実施された症例が83症例報告されたが,不適合輸血を含めて溶血性副作用の発生は報告されておらず,異型適合赤血球輸血の安全性があらためて示された 異型適合赤血球輸血の記載がある院内マニュアルの整備率は,平成19年,20年の35~39%から平成21年には57%に増加しており,院内体制の整備は進みつつあるものと考えられたことから,輸血を実施する現場の麻酔科医ならびに外科医の緊急輸血に関する認識が不足している可能性がある 大量出血は,手術室における危機的偶発症あるいは,その後の死亡の最大の原因となっているにもかかわらず,関係する医師の間でこの問題に対する認識が低いことが問題である.病院としてどのように介入することがこの問題の解決につながるのか,今後の検討を要する
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