2009 Fiscal Year Annual Research Report
発作性頭位めまい症の発症メカニズムとエストロゲンの前庭器内局在に関する基礎的研究
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19591989
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Research Institution | Tokyo Medical University |
Principal Investigator |
鈴木 衞 Tokyo Medical University, 医学部, 教授 (80116607)
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Keywords | 良性発作性頭位めまい症 / 耳石 / エストロゲン / 卵形嚢 / 半規管クプラ / 前庭器 / 動物モデル |
Research Abstract |
昨年度は、若年と高年のマウス内耳のエストロゲン受容体(ER)の発現を免疫組織学的に検索し、性別や年齢でERの発現が異なり、これが良性発作性頭位めまい症などのめまい症発症へ関与することが推測された。今年度は更年期動物と高齢動物モデルにおいて耳石器の形態、振動負荷後の耳石の変化について検索した。耳手術用ドリルにより10分間の振動をラット頭頂部に負荷し、実体顕微鏡下で平衡斑耳石の形態を観察し、耳石の形態的変化をグレード分類した。振動負荷により球形嚢耳石の剥脱がみられたが、更年期、高齢ラットでは正常ラットよりも耳石が剥脱しやすかった。以上から、更年期や高齢の状態では形態的変化によって耳石が剥脱しやすくなり、半規管結石症を惹起し、さらに良性発作性頭位めまいを起こすと考えられた。また、半規管クプラも薬物負荷その他の原因により形態変化、とくに収縮を起すことが判明し、頭位性めまいの原因になることが考えられた。昨年に続き、良性発作性頭位めまい症の特異的理学療法として頭位治療(耳石置換法)の有効性を検証するために、頭位治療によって卵形嚢に戻った耳石が卵形嚢斑上で安定するまでの時間を計測した。摘出ウシガエルの正常卵形嚢耳石上に耳石塊を置き、直後、3分後、5分後にそれぞれ、卵形嚢を垂直に10秒間保持した後の耳石塊の位置を観察した。前年度は正常卵形嚢斑と耳石を完全除去後の卵形嚢斑を用いたが、今年度は更年期や高齢の卵形嚢斑のモデルとして耳石を約二分の一除去した卵形嚢斑を用いた。正常では耳石塊は耳石膜に捕らえられて直ちに固定するが、耳石完全除去卵形嚢では耳石塊を置いた直後に耳石塊は移動し、固定までに5分を要した。耳石半分除去モデルでは耳石塊固定までに最低3分を要し、半規管結石症が起こると理学療法後もめまいが残存しやすいと考えられた。このように、耳石層が異常な状態では耳石塊の固定は弱く、高齢者や更年期では耳石代謝が障害され、不安定感やめまいの原因となることが想像できた。しかしながら、一定時間後には耳石は固定するので理学療法の有効性は保たれていると考えられた。
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Research Products
(5 results)