2009 Fiscal Year Annual Research Report
イタリア看護師の地域精神保健活動の実態-精神病院閉鎖に伴う看護師役割の変化-
Project/Area Number |
19592613
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Research Institution | Musashino University |
Principal Investigator |
妹尾 弘子 Musashino University, 准教授 (90289968)
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Keywords | 地域 / 精神病院 / イタリア / 看護師 / 閉鎖 / 役割 |
Research Abstract |
本研究の目的はイタリアの精神病院の閉鎖に伴う看護師の地域精神保健活動の実態を明らかにすることである。今年度は1978年にイタリアトリエステで始まった精神医療改革以前から精神病院に勤務し、実際に改革に携わった看護師5名のインタビュー資料をもとに、改革前の精神病院の実態、特に患者および看護師の日々の生活の実態を明らかにした。 改革前の精神病院では、男性スタッフが男性患者、女性スタッフが女性患者を担当し、また病棟は興奮する患者、重症患者、不潔患者などに分けられ、患者70~180人に看護師2~3人で担当するなど、劣悪な環境であった。患者は非人道的な扱いを受けている状況を知り、何とかしたいと看護師になった者がいる一方、何も分からずに看護師として勤めるなど、看護師の教育体制および無資格者による看護がなされていた。また医師や自分より年齢の高い者に言われるがままに活動する看護師もいたなど、病院には院長をはじめとする完全なヒエラルキーがあり、さらに法律によってっも看護師は病院の体制に影響を受け、患者に対する非人道的な扱いが横行していた。 看護師の多くがこのような体制を良しとみなしていなかったが、患者や上司に対する恐怖や不安から従わざるをえない状況であった。そのためバザリア医師の行った改革は、患者の解放のみならず、看護師たち自身を恐怖や不安、絶望から解放した。その後看護師は自分たちが解放されたことで、患者との関係性が大きく変化した。看護師は患者と「コミュニケーションをとる」「一人にしない」「関心を示す」「病院外との関わりがもてるようにする」など心がけ、患者を一人の人間としての尊厳の回復を目指した。また改革によって自分たちの患者に対する権限がなくなることを恐れ改革に反対していた看護師達は病院をやめ、バザリアの改革に賛同した看護師たちは毎日ミーティングやグループワークを開き、治療計画を皆でたてるなど、自由に意見を述べる時間を設け改革をすすめた。
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