2009 Fiscal Year Annual Research Report
「のさり」の両義性と日本人のウチ・ソト文化からみた地域ケア・システムの構築
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19592620
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Research Institution | Kumamoto Health Science University |
Principal Investigator |
竹熊 千晶 Kumamoto Health Science University, 保健科学部・看護学科, 教授 (20312168)
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Keywords | 「のさり」 / ウチ・ソト / 公営団地 / ケア文化 / ケア・システム / 要介護状態 |
Research Abstract |
「のさり」は九州、特に熊本地方で病いや障害に対する価値転換として使用される一方で、差別や放任にもつながる両義的な方言であった。そのような日本のケアの文化をさらに探求していくと、家族の中で誰かが要介護の状態になった時に、「ソト」からの援助が「ウチ」に入ることへの障壁が存在することが明らかとなった。そこで、高齢化の進む公営団地で介護の実態を調査した。日本の公営団地は、築40年以上5階建て、エレベーター無しで巨大な人口集落である所が少なくない。高齢化の進行と低所得層の長期居住、独居世帯の増加などにより、孤独死、閉じこもりなど様々な問題が表面化してきた。この調査が行われる過程においても、都市型犯罪増加に伴う自己防衛、住民同士の関係の希薄化などの影響で様々な困難が生じた。この困難そのものが、団地住民の現実であり、生活実態であると理解される。日本の社会は、ウチとソトの境界が明瞭で、しかもこの境界は関与の項目ごとに多層構造になっている。この多様な関心や生活課題の内、身体のケアに焦点があてられる場合、ウチの範囲が極めて狭く限定される。回答者においても、世話や介護といったケアに関しては身近なウチの範囲である親族に頼る傾向がみられ、特に身体接触を伴うケアはほとんど同居家族、もしくは訪問看護師が担っていた。家族の小規模化は、大家族に比べて制度的規範が弱まると考えられるが、それを補う意味において親密性が介護の重要な要素となる。しかしこの時、親密性はソトからウチへ向けてのケアの援助にとって障壁となる。ソトの人間がウチのなかに入ることは、「羞恥の感情」を生じさせない特別な条件を伴わない限り困難である。今後、将来的な介護困難は容易に予想され、これらの日本のケア文化を考慮した持続可能なケア・システムには、地域特性に応じたケア範囲の規定と専門職と近隣住民の関与項目の分担などの検討が急務である。
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