2009 Fiscal Year Annual Research Report
痛覚過敏病態形成における脂質シグナル分子の役割の解明
Project/Area Number |
19603001
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊藤 伸子 The University of Tokyo, 医学部附属病院, 講師 (80332609)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
張 京浩 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (50302708)
浅原 美保 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (60529155)
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Keywords | 脂質 / 神経科学 / 炎症性疼痛 |
Research Abstract |
強力な白血球走化因子ロイコトリエンB4(LTB4)が炎症性痛覚過敏反応の病態形成にどのように関与するか研究した。炎症により活性化白血球が血管内から遊走し、痛覚過敏を起こす主体となり、神経系に何らかの作用を起こしていると推測し、炎症性疾痛モデルでLTB4受容体1欠損マウス(BLT1KO)と野生型マウス(WT)を比較した。[方法]1)ホルマリンテスト:ホルマリンを足底に注入し、licking/biting timeを計測し、自発痛の発現を比較した。2)カプサイシンテスト:カプサイシンを足底に注入しlicking/biting timeを同様に計測した。3)術後痛モデル:足底皮膚に切開を加え、術後痛モデルを作製した。von frey test(機械的刺激に対する閾値測定)を手術前、手術2時間後及び1~7日後に施行しmechanical allodyniaの程度を検討した。[結果及び考察]ホルマリンテスト:注入初期の局所に対する自発痛反応に差は認められなかった。注入後期の自発痛反応はBLT1欠損マウスで野生型マウスに比し、有意な疼痛行動の低下が認められ、脊髄レベルでの痛覚入力にBLT1が関与している可能性が示唆された。カプサイシンテスト:BLT1欠損マウスは野生型マウスに比し、有意な疼痛行動の低下が認められた。術後痛モデル:BLT1欠損マウスは野生型マウスに比し、手術2時間後及び手術1、2、3、4日後のmechanical allodyniaの程度が有意に抑制されていた。BLT1が炎症性・組織傷害性疼痛に関与していることが示唆された。LTB4-BLT1による白血球活性化が炎症性疼痛の病態形成に関与している可能性、LTB4が末梢神経、脊髄神経に作用している可能性の両者が考えられ、神経因性疾痛モデル実験での今後の成果が大変興味深い。
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