2009 Fiscal Year Annual Research Report
犯罪者の更生と地域コミュニティへのインクルージョンによる秩序形成の意義と可能性
Project/Area Number |
19610010
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
小長井 賀與 Rikkyo University, コミュニティ福祉学部, 教授 (50440194)
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Keywords | 犯罪者 / 再統合 / 刑事司法機関 / 生活保障 / 自治体 / 社会参加 / 当事者支援 / パートナーシップ |
Research Abstract |
今年度は、国内外の刑事司法機関や犯罪者支援団体などを視察・調査し、犯罪者の更生と社会再統合のための社会的な仕組みについて、総合的に考察した。 海外視察では、犯罪者のインクルージョンに関する多様なモデルを得るために、研究メンバー(研究代表者と連携研究者)が手分けして、英国、フィンランド、スウェーデン、オーストラリア、米国の6か国を訪問し、情報収集を行った。刑事司法機関及び市民セクターによる犯罪者や薬物依存者等の社会復帰支援団体での視察・調査の結果、法体系や社会・文化的特徴によって差異はあるものの、どの国も判決後の法執行場面では、犯罪性を除去し向社会性を促進するための更生プログラムと、他機関・団体とのパートナーシップによる社会参加促進策が併せて整備されていた。EU諸国では社会参加促進策の中心は就労支援とされているが、住宅の確保、生活習慣の改善、職業訓練、就労斡旋が刑罰や処遇の中にうまく取り込まれていること、さらには就労訓練中の生活費の一部又は全部を公的扶助によって補てんするなど、刑事司法制度と社会保障制度が繋がっている。特に北欧では公的資金による生活保障は当然、社会での更生プログラム受講費用までも自治体が負担する所もあり、犯罪者の再統合を社会が自らの責務と認識していると言える。一方、米国ではNPOや当事者団体が元犯罪者の社会参加を支援し、その背後で国や自治体がそれらの団体を財政的に支援する構図があり、更生と社会復帰を必ずしも自己責任に帰していない。 国内では、主に更生保護施設を視察した。日本では、高齢者や障害者を除き、犯罪者に対する生活・就労支援とも十分に制度化されていないが、市民セクターの支援を受けながら社会参加の道筋が少しずつであるができつつある。研究成果は学会、図書、学術雑誌に実表した。さらに、非行少年の当事者団体を立ち上げ、当事者とともに北欧での当事者支援の状況を視察した。
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