2008 Fiscal Year Annual Research Report
博物館等民俗資料収蔵施設における椿油を用いた簡易的防錆処理の研究
Project/Area Number |
19611011
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Research Institution | Kyoto University of Art and Design |
Principal Investigator |
伊達 仁美 Kyoto University of Art and Design, 芸術学部, 准教授 (00150871)
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Keywords | 椿油 / 防錆処理 / 民俗資料 / 民俗文化財 / 民具 / 博物館 / 民俗資料館 / 簡易処理 |
Research Abstract |
民俗文化財は、温度・湿度が管理されている場所だけでなく、移築民家や、学校の空き教室を利用した施設で展示・保管、さらに建物に入りきらず屋外に展示していることがある。また、臨場感を演出するため、屋外で保存することが避けられない場合がある。本研究は、様々な収蔵環境を想定し、その現場において実験し、温度・湿度が一定でない環境下での椿油の防錆効果を検証する。実験には、一般に市販されている椿油を使用することとした。使用した椿油は、2007年7月の時点でホームセンター、インターネット等で容易に入手できた市販の椿油15点で、それを防錆剤として使用の可否とともに油の差異による効果も検証する。本年度は、平成19年度から約1年間行った屋外に展示された民俗資料を想定した実験が終了し、その結果を分析した。また、錆発生のひとつの要因である湿度の影響を調査するため、高湿度下での促進劣化試験も行った。その結果、椿油を塗布していない鉄板の錆の発生率は100%だったことに対し、椿油を塗布した鉄板の錆は10〜25%程度であった。しかし、試験片設置から約2ヶ月の時点の目視で、すでに黄色い油膜状の付着物が見られる試料があり、鉄板には埃が付着していた。SEMによる観察では、錆部分とは明らかに形状が異なる面状に広がったオイルステインと思われる物質の上に埃等が付着していた。油の種類によっては2ヶ月ほどで錆が発生することが明らかになった。しかし、油の選択と塗布方法、塗布後の管理を行うことで、屋外に展示された試料に対しても椿油を用いた防錆処置は有用といえる。 平成20年度は、東京都世田谷民家園、石川県立歴史博物館、石川県立白山麓資料館、四国民家博物館において実験を開始し、原野農芸博物館、滋賀県立琵琶湖博物館では、経過観察を行った。なお、世田谷民家園、向日市文化資料館で資料保存のワークショップを行った。
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Research Products
(1 results)