Research Abstract |
今年度は, 徳之島トマチン遺跡の調査成果の中間報告を中心として, その他の関連研究, そして発掘調査を実施した。 トマチン遺跡第1〜4次発掘調査の成果報告を, 日本考古学協会第74回総会(5月), 平成20年度鹿児島県考古学会(7月), 第62回日本人類学会大会(11月), 2008年度廣友会(12月)で行なうことができ, 立地, 墓の構造, 埋葬方法, 出土遺物の状況を説明し, 墓制としての特性と通有性を説明することで, 同遺跡の重要性を広く認知することができた。 日本文化財科学会第25回大会でポスター発表を行なった。内容は南西諸島の縄文時代後・晩期並行の土器の蛍光X線による胎土分析で, これまで大雑把に奄美系, 沖縄系とされていた土器群の島嶼ごとの分析を行ない, 奄美大島南部と沖永良部島の胎土的特性をつかむことができた。これは, いずれ行なうほぼ同時代のトマチン遺跡の土器分析のための布石となる。 年度末には, トマチン遺跡の第5次発掘調査を行なった。その結果, 最下段の埋葬を確認することができた。この埋葬は人骨も部分骨がほとんどで, 埋葬人骨が石棺内部から別の場所へ動かされていると考えられる。また, 底石も半分以上が抜き取られており, おそらく中段埋葬の際に, 側壁に再利用されたものと考えられた。以上のことから, 石棺墓1の内部構造は三重構造となっており, 石棺墓としては極めて稀な構造を持つことが判明した。また, 石棺墓群と隣接して, 二次的に人骨の動かされた墓坑が確認され, 石棺構造はとらないことから、土坑墓として認定できると考えられた。石棺墓群との関連が注目される。 また, 筆者のこれまでの一連の研究である, 南西諸島の土器研究, 交流・交易の研究, 墓制研究, 狩猟採集社会の復元が認められ, 第30回沖縄研究奨励賞を受賞した。贈呈式典では, 「貝塚時代後期前半(弥生時代〜古墳時代)の交易と社会」と題して, 研究成果の講演を行なった。
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