2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19682003
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
新里 貴之 鹿児島大学, 埋蔵文化財調査室, 助教 (40325759)
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Keywords | 遺物整理 / ウォーター・フローテーション / 花粉分析 / mtDNA分析 / C14分析 / 炭素・窒素安定同位体分析 / 土器胎土分析 / ガラス玉・ヒスイ分析 |
Research Abstract |
本年度は、トマチン遺跡発掘調査報告書作成のための遺物整理作業に費やした。考吉学的な見解として、トマチン遺跡の三重構造となる石棺墓の構造が、日本国内にも類例がなく、朝鮮半島・台湾にも類例がないことが判明した。縄文時代晩期末~弥生時代前期に南西諸島に展開する石棺墓は、西北九州を中心とした石棺墓情報が流入し、島嶼地域で独自にアレンジされた石棺墓であろうと判断された。墓制構造では棺材、埋葬姿勢、埋葬構造(追葬)、遺物では、貝製品が主要な装身具・葬具であり、南西諸島で葬墓制に共通する要素が多い。 遺物では土器の岩石学的分析、理化学的胎土分析を行ない、考古学的な土器胎土(焼成・混和材)の差異と、理化学的分析結果を総合したところ、肉眼観察における考古学的な分類はかなり精度の高いものとして理解できることが分かった。出土ヒスイは糸魚川産であり、ガラス玉は10世紀以降に日本に流通する素材であり、後世の根成孔隙によって上部から混入したものと判断された。 出土人骨は形質的に南西諸島の先史時代人の範疇にあり、mtDNAは2体分が分析され、ハプログループでは2号人骨がD4n、4号人骨がD4bであることが判明した。親族関係その他については不明確である。人骨を用いた炭素・窒素安定同位体分析では、やや外洋魚類に偏る可能性が示唆された。ところが、海産貝類・魚類の組成分析では、外遊魚類はほとんど検出されず、リーフ内の魚貝類に依存している傾向が指摘されている。 その他、石棺墓土壌のウォーター・フローテーション、花粉分析によって、当時の環境を復元しようと考えたが、遺跡の立地が砂丘という性質上、良好な結果は得られなかった。 以上の科学分析のほとんどが連携研究者や研究協力者によって行なわれたものである。報告書作成費はほとんどが、我々が調査する以前の、トマチン遺跡検出人骨の理科学分析に充てることとなったことが研究計画と異なった。
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Research Products
(9 results)