Research Abstract |
本研究ではGeの表面酸化を,GeO_2形成とGeO脱離の2つの過程の同時進行する現象と捉え直し,GeO脱離が酸化膜の膜質へ与える影響を定量的に明確化すること,また,その制御指針を示すことを目的としてきた。前年度までに,分光エリプソメトリーで測定したGeO_2の複素屈折率の虚数成分により,バンドギャップよりもやや小さい5~6eVのエネルギー領域での光吸収(サブギャップ吸収)を評価すると,これがGeO_2膜質の定量的な指標となることを示した。そこで今年度は,酸素分圧の異なる雰囲気中で加熱されたGeO_2/Geスタックに同手法を適用し,熱処理中の酸素分圧,温度,処理時間の効果を系統的に調査した。 まず,酸素分圧を変化させて熱処理を行ったところ,酸素分圧の上昇と共にサブギャップは減少し,あるしきい圧力以上を与えると完全に消滅することが明確となった。このことから,サブギャップ吸収はGeO_2中の酸素欠損に由来する欠陥生成を表わすことが分かった。また,種々の温度において,サブギャップの抑制に必要となるしきい酸素分圧を評価したところ,温度の上昇と共にしきい酸素分圧も上昇した。これは,酸素欠損が高温ほど生じ易くなる熱力学的な関係とよく対応する。また,サブギャップの大きさの熱処理時間依存性を調べたところ,時間とともに急速に上昇したのちに飽和する様子が観察された。このことも酸素欠損に伴う欠陥の濃度は熱力学的な平衡状態で収束することを表わすと考えられる。また,この飽和の時定数の温度依存性は,GeO脱離速度のそれとよく一致しており,GeO脱離と共に欠陥形成が進んでいると考えればよいことが分かった。以上の実験結果から,GeO_2中に熱処理とともに形成される酸素欠損性の欠陥濃度を定式化することに成功し,本研究の当初の目的はほぼ達成された。
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