2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19710197
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
北本 尚子 岩手大学, 農学部, プロジェクト教員 (70447241)
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Keywords | 保全 / 近交弱勢 / サクラソウ / 絶滅 / 有害遺伝子 / 連鎖地図 |
Research Abstract |
近交弱勢が野生集団の絶滅確率に及ぼす影響は研究者間で意見が分かれている。この影響を明らかにするためには、近交弱勢のダイナミクスに大きく影響すると考えられる有害遺伝子座数やその相乗効果などの遺伝的背景を明らかにする必要があるが、野生種を対象とした研究はほとんどない。そこで、典型的な他殖性植物であり絶滅危惧種であるサクラソウを対象に、近親交配を行い、発芽から発芽1年後までの生育初期に働く近交弱勢の関与遺伝子に関してQTL解析を試みた。 全きょうだい交配に由来する228個体からDNAを抽出し、65のSSRで遺伝子型を特定して連鎖地図を作製したところ、55のSSRが11本の連鎖群上に座乗した。各表現形質とSSRの遺伝子型との相関を解析したところ、第3連鎖群上にあるga0343遺伝子座の周辺で同じ祖先に由来する対立遺伝子をホモ接合で持つと、葉緑素が欠乏したアルビノになる確率が高まり、葉面積が小さく、翌年の出芽が遅くなり開花数も少なくなることが分かった。このことから、この遺伝子座の近傍には、近郊弱勢の発現に関与する有害遺伝子が座乗していると推察された。また、ga0343とga409-1遺伝子座の両方で同祖的な対立遺伝子kをホモ接合で持つ個体は、葉数が平均8枚と極端に減少する相乗効果も認められた。このことから、サクラソウにおける近郊弱勢の発現に有害遺伝子座の相乗効果も存在していることが示唆された。
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