2008 Fiscal Year Annual Research Report
安住院蔵書調査を基盤とする西国文化圏と伝播ルート解明に関する基礎的研究
Project/Area Number |
19720042
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中山 一麿 Osaka University, 文学研究科, 招へい研究員 (10420415)
|
Keywords | 文献調査 / 安住院 |
Research Abstract |
20年度、安住院現地調査はのべ二十日間程行った。上期は主に藏二階にある貴重書の細目カード作成と撮影を行った。また、西大寺観音院での聖教調査を行い、書誌・識語の入力、聖教各々の部分的撮影を進めた。この調査から、西大寺と安住院は法流や組織の上で緊密な関係にある事が判明してきた。備州での文化形成解明の一助となろう。 夏から秋は、善通寺での調査を中心に行った。安住院と善通寺は中世には共に増吽を中興と仰ぎ、現在では隨心院流の寺院として共通するが、残存聖教からすると、両寺院共に安祥寺流や醍醐寺報恩院流の典籍が多いという特徴が解り、識語には共通する僧名も多い。両寺院は瀬戸内海を挟んで対峙する真言道場であり、自ずとその往来は注目に値する。12月の説話文学会で取り上げた善通寺蔵『真友抄』も元は瀬戸内海の真ん中に位置する塩飽諸島の正覺院にあったもので、備讃地区の真言僧による伝書経路解明に資する典籍と考える。各々の寺院経蔵は点に過ぎないが、丹念に一つ一つの蔵書から得られる情報を集積する事で、それらが線で結ばれて行くのであり、その意味は文化の伝播、文化圏の形成にとっても大きな意味を持つ。 秋以降は、安住院の藏一階にある聖教類の調査を行った。元は、古びた段ボールに詰めてあった聖教を、前年までに虫干しと新しい仮の段ボールへの移し替えをしていた。本年度はそれを更に、枡形次第書、巻子本、冊子本、印信類、木箱入りの物に分けて、中性紙段ボールに詰め替えた。その上で聖教番号を付加し、外題・内題・表紙情報・装幀などをカード化、及び撮影を行っている。また、書誌・撮影の終わったものから、番号を振った栞を挟み込み、整理を行っている。更に汚れのひどいものや状態の悪いものの保全にも取り組んでおり、今後の保存と利用を意識した調査を続けている。現在までに約1000点の典籍についてこの作業を終えている。
|