2009 Fiscal Year Annual Research Report
安住院蔵書調査を基盤とする西国文化圏と伝播ルート解明に関する基礎的研究
| Project/Area Number |
19720042
|
|---|
| Research Institution | Osaka University |
|---|
Principal Investigator |
中山 一麿 Osaka University, 文学研究科, 招聘研究員 (10420415)
|
|---|
| Keywords | 文献学 / 地域文化 / 寺院聖教 / 文化財保護 |
|---|
| Research Abstract |
安住院調査はアルバイト作業員を一人伴い、予定通り年間20日程度実施した。別置されている重要文献類の細目調書、及び全8函の聖教用中性紙段ボールに詰め替えた聖教類の内、巻子本・全巻揃いの尊法書を除く全体の8割程度の聖教類の仮目録を作成した。目録作成に伴い、全典籍に聖教番号を付した。現在までに調査した総典籍数は細目にして約3000点に及ぶ。また平行して全冊撮影を行い、6割程完了している。これらの成果とデータは未完・未校訂故、寺院内仮目録として電子データとして安住院に寄贈した。
安住院文献と西大寺会陽の関連に注目して始めた西大寺調査は、西大寺会陽の創始者とされている忠阿上人の研究へと発展し、西大寺史や会陽の起源を巡る問題に新たな視点を開いた。本研究は学会でも一定の評価を得、また西大寺会陽500周年と重なったこともあって、地元報道機関でも取り上げられ、地方史研究にも少なからず進展をもたらしたと考える。
その他にも、木山寺では現存聖教の所在確認を行い、勇山寺では中世期の版木類の保護処置を行った。この両寺院では大阪大学東洋美術史の院生の協力を得て、仏像・絵画の調査も行った。また、弘法寺に於いても未調査聖教類の所蔵を確認し、次年度以降の調査許可を戴いた。更に、讃岐地方寺院では、与田寺や塩飽諸島の正覚院の調査を善通寺調査との関連性から実施計画を立てている。
如上の研究は、本研究が目指す、西国文化圏の文物と伝播ルート解明に関する基礎的研究であり、聖教調査を中心にした分野横断的文化遺産の調査と、相関する地方寺院の総合的研究として、今後も重要度が増す研究であり、残された課題も多い。
|
