2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19730042
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
嵩 さやか Tohoku University, 大学院・法学研究科, 准教授 (00302646)
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Keywords | 社会科学 / 社会福祉関係 |
Research Abstract |
平成19年度は本研究の初年度として、まず主に本研究が対象としているフランスの年金制度の現状の把握を行った。そこでは、文献・資料の収集・渉猟だけでなく、実際にフランスの年金政策の方向性を検討している年金についての諮問機関である年金方針委員会(Conseil d'orientation des retraites)へのインタビュー調査を実施することにより、より生の考え方にふれることができたため、有意義な研究となった。具体的に検討したのは、フランスが近年経験した大きな改革である2003年年金改革の内容と、その後の動き、特に2008年に予定されている定期的見直しにおける課題であり、平成19年度はこれらについて、本研究が注目している「個人の選択の自由」と「仕事の負荷(penibilite)」の観点から、掲げられている理念とそれを実現させるための基盤整備の可能性などについて分析を行った。こうした作業により、「個人の選択の自由」や「仕事の負荷」についての「公正」などの理念は、これまでの老齢のリスクのあり方や、保険原理に基づく被保険者間のリスクの分散という社会保険の基盤に少なからず影響を与えるものであるとの分析が得られた。この分析は、今後の年金制度の役割・あり方や支給開始年齢の引き上げなどを検討する上で、重要な示唆を与えるものとして大きな意義を有する。他方で、そうした理念を実効的に実現させるための基盤として、高齢者雇用政策の重要性とフランスでの政策の転換についての検討も行い、年金制度と高齢者雇用政策とが密接な関連をもって議論さえるべきことを示した。
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