2009 Fiscal Year Annual Research Report
消費者法の展開により生じる民商法体系再編の可能性と必要性の検討
Project/Area Number |
19730082
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
上野 達也 Kyoto Sangyo University, 法学部, 講師 (30362552)
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Keywords | 民法典 / 消費者法 |
Research Abstract |
本研究は、近代法システムから現代法システムへの転換において、近代法システムの基本原理と、国家が社会経済秩序へ介入するに際するその理念との関係をどのようにとらえるべきなのか、ということを問題意識とするものである。そして、具体的法制度(「撤回権」「団体訴訟制度」)に関する問題を素材として、消費者法と民法それぞれが基礎とする基本原理及びその関係を明らかにするモデルを提示しつつ、特定の立場に立った上で提言を行おうとした。しかしこの作業は難航を極めた。その原因は、今現在進行している日本民法典の改正作業の動向をどのように見極めればよいのか判断できなかった点にある。本研究は、消費者法と民法との関係を分析するものであるが、民法典の中に「消費者」概念を導入する方向で改正作業が進行しており、現行法下において何らかの提言を行ったとしても、法改正がなされた後には、その提言が意味を持たなくなる、あるいは陳腐化する可能性があったのである。 そこで研究の方向性として、民法典改正作業を視野に入れつつ、消費者法を直接問題とはしないが、原理のレベルでは関係する、より具体的な解釈問題に的を絞ることにした。具体的には、訴訟による紛争解決を求めることが、私法秩序においてどのように位置づけられるのか、また、訴えを提起することが不法行為と評価される場合、それは法秩序(私法秩序)においてどのような評価が下されているのか、という問題である。この問題は、本研究課題および本研究計画とも密接に結びつくものである。とりわけ、消費者団体による団体訴訟制度が消費者契約法に導入された際には、一般社会の一部では、アメリカ型の団体訴訟が想起され、濫訴の懸念が抱かれていたのであり、訴えを提起すること、そしてそれが不法行為と評価され損害賠償が課せられることについての考察が、団体訴訟制度の今後の運用・展開に不可欠である。
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Research Products
(1 results)