2007 Fiscal Year Annual Research Report
予防原則による国内予防措置の正当化機能の研究:カルタヘナ議定書をめぐる理論と実践
Project/Area Number |
19730087
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
堀口 健夫 Hokkaido University, 大学院・公共政策学連携研究部, 准教授 (10374175)
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Keywords | 予防原則 / 国際環境法 / カルタヘナ議定書 / バイオセーフティー |
Research Abstract |
平成19年度は,予防原則が関連する国際紛争処理事例の検討を主な手がかりとしながら,国際法上の予防原則の規範性の理論的検討を中心に研究活動を進めた。より具体的には,国際海洋法裁判所の暫定措置命令(みなみまぐろ事件,MOX工場事件,シンガポール埋立事件)や,WTOの紛争処理事例における小委員会・上級委員会の報告(牛肉ホルモン事件,バイオ技術産品事件)などの検討を進め,紛争処理機関が予防原則の法的地位については明確な判断を下すことを回避する一方で,実質的には関連する条約の解釈において予防的な概念(予防アプローチ)を考慮してきていることを明らかにした。このことは,予防原則が国際慣習法の規則であるか否かという点を1つの論争軸に展開してきた従来の学説の議論の限界を示すものであると同時に,しばしば予防原則の基礎として言及される伝統的な重大損害禁止規則との異質性を示唆するものであり,環境損害を防止する「義務」のみならず「権利」をも基礎付けているという,バイオセーフティー分野での予防原則の機能の展開を理解するための1つの重要な視座を提供する。以上の研究成果の一部は,平成19年6月10日環境法政策学会において論文報告という形で公表し,関連する研究会においても報告を行った。また論文も既に脱稿しており,学会誌等で平成20年度に公表される予定である。なお平成19年度後期には,バイオセーフティー議定書の運用の実証的研究にも着手しており,20年度も引き続き検討を進めていく。
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