Research Abstract |
本研究課題の初年度として, 本研究課題の軸となる防衛的悲観主義尺度に関して, その妥当性および信頼性を向上させる研究を進めることを計画し, 実行した。具体的には, 防衛的悲観主義尺度を用いて実施した調査研究および実験研究から得られたデータに関して, 統計パッケージSPSS14.0およびAMOS5.0を用いてより統合的かつ詳細な分析を行った。防衛的悲観主義尺度を開発し, その信頼性および妥当性を検討した結果を査読付き学術論文として投稿し, 学術雑誌「心理学研究」に「日本人大学生を対象とした学業達成場面における防衛的悲観主義の検討」というタイトルで論文が掲載された。この論文では, 日本人大学生を対象に,学業達成場面における防衛的悲観主義について, 真の悲観主義者と防衛的悲観主義者を弁別する尺度(JDPI)を作成した結果を公表した。研究1では695名の大学生を対象に調査を実施した。因子分析の結果, JDPIは24項目, 4因子構造(悲観, 過去の成績, 肯定的熟考, 努力)となった。研究2では695名の大学生を対象に, JDPI, テスト対処方略尺度, および, 状態-特性不安尺度について回答してもらった。その結果, JDPIの高い内的一貫性および再検査信頼性が認められた。防衛的悲観主義者および方略的楽観主義者は, 真の悲観主義者に比べ, 積極的方略をより多く, 回避的方略をより少なく採用していた。また, 防衛的悲観主義者および真の悲観主義者は, 方略的楽観主義者と比べ, 楽観的思考方略をより少なく採用しており, 状態不安の程度はより高かった。これらの結果からJDPIの高い構成概念妥当性が確認された。また,図書の執筆として, 「自己心理学3健康心理学・臨床心理学へのアプローチ」(塩崎万里・岡田努(編)金子書房)の分担執筆「第8章青年期における悲観・楽観主義」,p.135-151.)を担当し, 防衛的悲観主義の概念および防衛的悲観全義尺度の概説をおこなった。
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