2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19770189
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
長田 洋輔 The University of Tokyo, 教養学部, 特任助教 (50401211)
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Keywords | 細胞・組織 / 移植・再生医療 / 再生医学 / 発生・分化 / シグナル伝逹 / 筋衛星細胞 / 自己複製 |
Research Abstract |
マウス骨格筋由来の筋芽細胞株C2C12を用いて骨格筋幹細胞の休眠状態への移行または休眠状態の維持に関与する因子を探索する中で、情報伝達系からのアプローチとしてアダプタータンパク質Grb2のノックダウンを試みたところ、興味深いことにリザーブ細胞が顕著に減少した。リザーブ細胞とは分化培養条件にありながら未分化なまま休眠状態を維持する細胞のことで、休眠状態の骨格筋幹細胞に相当する細胞である。この結果からGrb2を介した情報伝達系が骨格筋幹細胞の休眠状態への移行に必須であると考えた。さらに各種阻害剤を用いた実験により、Raf-MEK-ERKシグナルの阻害はリザーブ細胞化に関与しないこと、低分子量Gタンパク質Rasの阻害はGrb2ノックダウンと同等の結果をもたらすことを明らかにした。これらの結果から、Grb2-Sos複合体によって活性化されたRasがRaf-MEK-ERK以外の情報伝達系を介してリザーブ細胞化を引き起こすことが考えられる。 一方で、筋特異的な転写因子であるMyoDをノックダウンすることで、ほぼすべての細胞がリザーブ細胞化することを明らかにした。RasによるMyoDの機能抑制は報告されていることから、リザーブ細胞形成においてはGrb2-Sos複合体によるRasの活性化とそれに引き続いて起こるMyoDの機能抑制が重要な役割を担っていると考えられる。 本研究により、活性化された骨格筋幹細胞が再び休眠状態に戻る過程の一端を解明することに成功した。骨格筋幹細胞の自己複製は個体の生涯にわたって骨格筋再生能を維持するために必要な過程であり、その解明は筋疾患や老化による筋再生能の低下を克服するために役立つものと期待している。
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