2008 Fiscal Year Annual Research Report
環境保全型農業のための、イネのリン欠乏ストレス応答形質の単離と機能解析
Project/Area Number |
19780006
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Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
清水 顕史 The University of Shiga Prefecture, 環境科学部, 助教 (40409082)
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Keywords | 環境保全型農業 / ストレス応答 / リン欠乏 / 環境修復 / 遺伝解析 / 遺伝育種学 / ストレス耐性 / ホスファターゼ |
Research Abstract |
リン肥料の投入を減らし環境への負担を抑えた持続的農業を実現するためのイネ育種に向けて、2種類の有用遺伝子の探索を行っている。(1)リン欠乏によって誘導される根の伸長というストレス応答形質については、この形質を持つイネは水耕栽培条件で茎葉部へのリン蓄積量が高まることおよび、DNAマーカーを用いた精密マッピングの研究成果を専門雑誌において発表した。現在は、候補遺伝子の単離に向けて、後代の検定を準備中である。またこの応答形質の研究を進めるにあたって、ストレス下における形質問の真の関連性を見出す適切な検定法としてグラフィカルモデルが応用できることが分かり、学会発表を行った。(2)リン欠乏ストレスに応答してホスファターゼ活性が上昇するというストレス誘導性の形質については、イネ品種"日本晴"と"カサラス"の葉身において品種間差を見出した。この品種間差は古い葉ほど高く、カサラスは日本晴の4倍も酵素活性が高くなることがわかった。リン欠乏ストレスによって葉身のホスファターゼ活性が高まることによって、古い葉の中の有機態リンを無機リンへと再利用するストレス耐性機構の存在が示唆されるため、今後カサラスの持つ遺伝子について遺伝学的に検証する予定である。F2分離集団を用いたQTL(量的遺伝子座)解析の結果から、染色体8に候補領域を見出しており、さらに葉身から抽出したRNAを用いたマイクロアレイ解析によっても候補になるホスファターゼ遺伝子を検出している。このホスファターゼ遺伝子は以前のマイクロアレイ解析から根でもリン欠乏ストレスによって誘導され、しかもカサラスで発現が有意に高く、葉身だけでなく根あるいは根圏でも有機態リンからの無機リン獲得に貢献しているかもしれないことが分かった。この点を今後は確かめていく。
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