2007 Fiscal Year Annual Research Report
実験・計算化学を駆使した内耳内リンパ液における高電位・高カリウムの成立機構の解明
Project/Area Number |
19790188
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
日比野 浩 Osaka University, 医学系研究科, 准教授 (70314317)
|
Keywords | 聴覚 / 蝸牛 / 高電位 / カリウム / 血管条 / 実験科学 / シミュレーション |
Research Abstract |
聴覚は動物に不可欠な感覚機能であり、内耳蝸牛という末梢器官で受容される。蝸牛は内リンパ液という特殊な液体で満たされている。内リンパ液は細胞外液であるにも関わらず、150mMの高カリウムを含み、+80mVの高電位を示す。この特殊な環境は聴覚機能にとって必須である。我々は高電位・高カリウムの成立機構の解明を目的に、実験とコンピュータシミュレーションを駆使して研究を推進している。以前より、内リンパ液環境の成立には、蝸牛側壁の血管条と呼ばれる上皮組織を介した、外リンパ液から内リンパ液へのカリウム循環が重要であると予想されており、更に血管条に発現する幾つかのカリウム輸送装置が循環を支えていると考えられてきたが、詳細は不明であった。本年度は、カリウム選択的イオン電極を用いて、三種類の細胞(辺縁・中間・基底細胞)から構成される血管条の各細胞内外コンパートメントのカリウム濃度・電位の変化と内リンパ液高電位との関連をそれぞれの輸送装置を阻害した条件下で観察した。結果として、(1)血管条は)近接する細胞外液から電気的に隔絶されていること、(2)辺縁細胞と中間細胞の頂上膜に分布するカリウムチャネルにより2つの拡散電位が発生し、それらが内リンパ液の高電位の主成分であること、を見出した。これら(1)(2)の2つの要素により、内リンパ液の高電位は維持されていることが強く示唆された。更に、本年度の実験で得られたデータを基礎として、血管条を介したカリウム循環の一部のモデル化に成功した。
|