2008 Fiscal Year Annual Research Report
実験・計算科学を駆使した内耳内リンパ液における高電位・高カリウムの成立機構の解明
Project/Area Number |
19790188
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
日比野 浩 Osaka University, 医学系研究科, 准教授 (70314317)
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Keywords | 聴覚 / 蝸牛 / 高電位 / カリウム / 血管条 / 実験科学 / シミュレーション |
Research Abstract |
聴覚は動物に不可欠な感覚機能であり、内耳蝸牛と呼ばれる末梢器官で受容さる。蝸牛は内リンパ液という特殊な液体で満たされている。内リンパ液は細胞外液であるにも関わらす、150mMの高カリウムを含み、+80mVの高電位を示す。この特殊な環境は、聴覚にとって必須であり、辺縁・中間・基底細胞からなる血管条の中のカリウム動態の調節によって保たれている。我々は、実験・計算科学を駆使して、この高電位・高カリウムの成立機構の解明を目的に研究を推進してきた。前年度までに、内リンパの高電位は、血管条の中間・辺縁細胞に発生する2つのカリウム拡散電位と、血管条の電気的な隔絶状態によって、支えられていることを見出し、高電位の成立機構を定性的にほぼ解明した。本年度は、まず、血管条のカリウム動態に関わると予想されていたクロライドの輸送を実験的に検討した。正常時では、辺縁細胞と血管条内の細胞外のクロライド濃度はほぼ等しいが、無酸素負荷により、前者は若干低下し、後者は僅かに上昇することを見した。更に、前年度までの血管条のカリウム動態の実験結果と、今年度のクロライド動態の結果を統合して、内リンパ液の高電位をin silicoでシミュレーションした。このモデル化における各イオン動態を詳細に検討したところ、辺縁細胞に発現する種々の輸送体が機能的に共役していることを新たに見出した。また、今までに機序が説明できなかった、有毛細胞障害時での内リンパ液電位の変化のメカニズムも理解できた。
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