Research Abstract |
本研究の目的は,虚血性心疾患患者が退院移行期に生活の再編成に向け,どのような試みをしているのかを明らかにすることである.また,性差に注日するとどのような特徴があるめかを見出すものである. 23年度は,これまでのデータ収集結果をあらゆる側面から検討し,今後の課題を明らかにするとともに,国内外の関連学会への発表し,国内,海外雑誌への論文投稿にむけて準備した. 1.退院前後の生活リズムと生活の質(QOL)の変化 携帯型加速度センサーにて生活リズムを測定し,SF36ver2を用いてQOLの変化を検討した.その結果,待機的PCI治療をうけた女性は,男性より退院後のActx:体動加速指数が有意に低下していた.一方,退院後のLgsep:最長睡眠エピソードの長さは,男性よりも女性が有意に増加していた.待機的PCI患者と緊急PCI患者の比較では,待機的PCI患者が退院後のAmean:平均身体活動数が有意に増加し,退院直後から活動を拡大しているようであった. QOLは,現時点で性別による有意な違いは認められていない.しかしながら,器質的には冠動脈狭窄部位の治療が成功していても,退院後1週間,1ヵ月目のQOLは有意に改善していないことが明らかになった. 2.退院後の生活再編成に向けた取り組み 退院後初回外来時に生活における試みなどについて半構造化面接を行い,質的にデータ分析をおこたった.待機的PCI単者においては,食生活や運動習慣の取り入れなど生活習慣の改善や内服管理を行っても,再狭窄してしまう現実と直面し,取り組みに対する意識が変化することが示唆された.加えて,本研究の対象者の比率は,男:女=3:1の割合であり,現時点では対象者数に偏りが生じている.また,先行研究でも言われているとおり,対象者である虚血性心疾患患者の平均年齢は,男性よりも女性の方が10歳程度高齢であった.この対象者の概要から,性差だけではなく年齢も考慮した考察の必要性がある.そして、近年は就業し社会進出している女性も増加し,母親としで妻としてという女性特有の社会的役割と社会人としての役割を担うことも多く,これらの役割に対する考え方などもQOLに大きく影響を及ぼす可能性がある.さらに,社会的サポートの有無だけでなくその満足度や疾患に対する理解の仕方なども含めた検討が,生活再編成の試みには深く関与していることが示唆された.
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