2020 Fiscal Year Annual Research Report
地方基幹寺院に於ける文献資料調査と経蔵ネットワークの研究
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19H00529
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中山 一麿 大阪大学, 文学研究科, 招へい研究員 (10420415)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大田 壮一郎 立命館大学, 文学部, 教授 (00613978)
山崎 淳 武庫川女子大学短期大学部, 日本語文化学科, 教授 (20467517)
須藤 茂樹 四国大学, 文学部, 教授 (20612047)
高橋 悠介 慶應義塾大学, 斯道文庫(三田), 准教授 (40551502)
落合 博志 国文学研究資料館, 研究部, 教授 (50224259)
牧野 和夫 実践女子大学, 研究推進機構, 研究員 (70123081)
森實 久美子 独立行政法人国立文化財機構九州国立博物館, 学芸部文化財課, 室長 (70567031)
伊藤 聡 茨城大学, 人文社会科学部, 教授 (90344829)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 寺院文献資料学 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は新型コロナウイルスの蔓延により、本科研の活動も制限を余儀なくされ、以下の成果の一部は2021年度に跨がって遂行された業績も含む。 2020年4月には昨年度仏教文学会シンポジウム「蔵書解析としての聖教調査―覚城院と新安流を例として―」の内容を成稿した『仏教文学』45号が刊行。向村九音・平川恵実子・柏原康人による論考3点、及び中山一麿・山﨑淳・佐々木勇の関連稿が収録されている。7月には『寺院文献資料学の新展開 第9巻 近世仏教資料の諸相Ⅱ』(監修中山一麿・編集山﨑淳、臨川書店、全504頁)を刊行した。本書は論文9篇、資料紹介3篇よって構成される。以上2点の出版物は、いずれも寺院所蔵の近世文献を対象とした成果で、今後重要度が増すことが自明にも拘わらず、これまで等閑視されてきた膨大な近世文献に対して、本格的に研究の扉を開こうとする意欲的成果と考えている。 12月には「第5回 寺院資料調査研究報告「経蔵再生―覚城院聖教とその魅力―」」を開催し、5報告6名による研究発表を行った。今回は、覚城院の主に記録・文書類を中心とする発表を揃え、覚城院とその周辺の歴史事象を明らかにすることが進んだ。また、古文書修復の実作業を踏まえた報告も行い、修復業者と研究者の相互理解と視点の共有も図った。 一方、西福寺・高幡不動尊金剛寺の聖教を中心とした神道灌頂に関する研究も進めており、紹介すべき資料の選定、及び翻刻担当の振り分け等を行い、各々が作業に取りかかっている。 その他、現地調査が制限される中、大阪大学内では院生を雇用して、調書入力を開始しており、インターネットを利用しての書誌データ・画像の共有も進めているところである。 以上、本年度の実績、及び活動内容のうち主要なもののみ略述した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
人員の移動と集合を伴う現地調査を基盤としている本事業にとって、極めて厳しい社会状況であったが、研究遂行への様々な工夫で対処してきている。 研究会は会場を最低限の人数に絞り、オンライン併用で行った。寺院側の理解を賜り、必要な典籍の持ち出し許可を戴くことによって、大阪大学内での資料閲覧・撮影をある程度可能にした。現地調査は必要に応じて人数・回数を制限して行った。院生による調書作成・業者による資料撮影の割合を増やし、目録作成の遅延を極力抑えた。研究遂行上の必要な資料は、インターネット上で閲覧可能とした。 如上の対応策の整備に追われながらも、研究会や出版事業を継続している。一方で、当初の計画からすると、年度別の出版計画に遅延が出ている。しかしながら、平均350頁と考えていたシリーズ書籍は、本年度刊行書が504頁まで膨れ上がっている事からも窺えるように、それぞれの研究内容の充実度は大幅に増している。従って、出版計画の遅延が研究全体の遅延を意味するものでは無いが、今後も社会状況に対応しつつ進めなくてはならない以上、現状では見通しの立たない部分に懸念が残る。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究にとってフィールドワークは極めて重要であるが、現状の社会情勢下では十分な現地調査活動を行うことは困難であり、今後の見通しも従来通りの調査活動に戻すことは難しい。故に、これを機に資料収集のあり方の工夫と改善、及び遠隔での情報共有についての環境整備への取り組みに力を注いでいく。これは元々本科研の目的の一つであるが、現在の状況はその必要性を更に切迫したものにしており、本事業全体に占める割合も増やしていく。一方で、調査と平行して予定していた出版計画は社会情勢の影響を受けやすく、当初の刊行予定に縛られることは研究の質的劣化を招きかねない。故に、研究の進捗とのバランスを図りながら、刊行時期を見直していく。 本研究は既に長年のデータ・画像の蓄積があり、これを整理・活用することで、研究上の不都合を最小限に抑える事が可能である。また、現地調査が出来ない分、預り証と預り目録を作成することにより、寺院側から持ち出し許可をいただいた典籍は、大阪大学内で調査・撮影することが可能である。 これらの対策を練りながら、研究の優先順序の入れ替えや、方法の改良などによって、充分な成果を上げるべく努力を続けていく。
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Research Products
(25 results)