2019 Fiscal Year Annual Research Report
高齢社会・人口減少社会が提示する諸問題への法的対応と「人の法」・「財の法」の展開
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19H00573
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
吉田 克己 早稲田大学, 法学学術院(法務研究科・法務教育研究センター), その他(招聘研究員) (20013021)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金山 直樹 慶應義塾大学, 法務研究科(三田), 教授 (90211169)
片山 直也 慶應義塾大学, 法務研究科(三田), 教授 (00202010)
森田 宏樹 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 教授 (70174430)
平野 裕之 慶應義塾大学, 法務研究科(三田), 教授 (80208842)
小柳 春一郎 獨協大学, 法学部, 教授 (00153685)
吉井 啓子 明治大学, 法学部, 専任教授 (00306903)
松尾 弘 慶應義塾大学, 法務研究科(三田), 教授 (50229431)
田高 寛貴 慶應義塾大学, 法学部(三田), 教授 (60286911)
武川 幸嗣 慶應義塾大学, 法学部(三田), 教授 (10275018)
秋山 靖浩 早稲田大学, 法学学術院(法務研究科・法務教育研究センター), 教授 (10298094)
水津 太郎 慶應義塾大学, 法学部(三田), 教授 (00433730)
青木 則幸 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (30350416)
原 恵美 学習院大学, 法務研究科, 教授 (60452801)
山城 一真 早稲田大学, 法学学術院, 准教授 (00453986)
根本 尚徳 北海道大学, 法学研究科, 教授 (30386528)
高 秀成 大阪大学, 法学研究科, 准教授 (50598711)
金子 敬明 名古屋大学, 法学研究科, 教授 (80292811)
阿部 裕介 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 准教授 (20507800)
麻生 典 九州大学, 芸術工学研究院, 准教授 (20708416)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 財の法 / 人の法 / 相続法 / 高齢者 / 人格権 / 成年後見 / 負財 / 地域コミュニティ |
Outline of Annual Research Achievements |
1 昨年度の研究活動は、各人の個別の研究活動のほか、次の3本柱で遂行した。①「不動産所有権の今日的課題」と題する私法学会シンポジウムの主催とその準備。②各研究班からの問題探索的報告。③外部研究者を招聘した研究会。 2 ①については、3回の準備研究会を経た上で上記のシンポジウムを開催した。6人の報告者(吉田、田高、武川、秋山、山城、吉井)と2人の司会(金山、森田)のすべてが、本科研の研究代表者および研究分担者である。不動産所有権に関する私法学会として最初の本格的シンポジウムであり、その理論的提言についても、今日的課題への対応についても、高い評価を得た。 3 ②は4回開催した。そこでは、財産管理班:高秀成(善管注意義務)、青木則幸(リバースモーゲージ)、「人」班:金山直樹「性行為と慰謝料」、平野裕之(有料老人ホーム入居契約)、山城一真(ケベック法にみる高齢者保護」、武川幸嗣(高齢社会における「人の法」)、秋山靖浩(居住・コミュニティの確保)、松尾弘(地域コミュニティとその財産)、吉井啓子(フランス・ベルギーのマンション法)、総論ユニット:吉田克己(総論的考察)の諸報告が行われた。 4 ③は、国内研究者について2回開催し、橋本佳幸(AI)(札幌で開催)、能見善久(奴隷解放)、木村和成(人格権論)の3本の報告を受けた。外国人研究者としては、フランスのリル都市圏の空き家対策関係の実務家を招聘したほか、ムスタファ・メキ教授(フランス:パリ第13大学)チームとの共同研究を行った。テーマは、「AIと民事責任」(早稲田大学土田和博科研基盤Aとの共催)および「公証制度の比較法的研究」である。サン・ポー教授(フランス:ボルドー大学)を招聘した人格権関係の2回の研究会を開催した。ドイツのフランツ・ホフマン教授を招聘しての研究会は、新型コロナウィルス感染拡大の影響で、延期となった。 。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は、初年度ということで、各研究班からの研究課題探索的な報告をまず行った。ほぼ半数程度の研究分担者からの報告を得て、問題意識は着実に深まってきている。その全体を俯瞰して問題意識を共有する性格の総論報告を行ったことも有益であった。きわめて広範な問題領域を対象としているが、「人の法」「財の法」という視角を共有したアプローチが実践されてきている。 外国人研究者の招聘では、ムスタファ・メキチームとの公証制度の共同研究について、これまで日本の研究が手薄だったところが補完されているほか、司法書士との連携が深まりつつあることが特筆される。このテーマで、日本司法書士連合会との合同研究会も行った。現在、所有者不明土地問題との関係で、相続登記の義務化が立法課題になっている。この問題を深めるには、登記をめぐる社会的なインフラストラクチャー整備の課題が重要である。フランスでは、これを担う専門家として、分厚い層を誇る公証人がいる。日本の公証人にその役割を期待することは難しい。量的充実度と市民との距離がフランスの公証人とまったく異なるからである。日本では、司法書士にその役割を期待することが現実的である。今回の共同研究は、そのような方向での理論の深化と実践の端緒となりうるものであった。 サン・ポー教授との研究会では、人格権論に関して、「理論的問題:人格権の観念(歴史、権利構造、客体)と「実務的問題:私生活と表現の自由」が取り上げられた。人格権論の蓄積には、フランスと日本とで相当の隔たりがあり、フランス人格権論の第一人者であるサン・ポー教授との共同研究を実施できたことは、今後の日本における人格権論の理論的展開を図る上できわめて有益であった。 なお、前科研からの継続であるが、吉田克己編著『物権法の現代的課題と改正提言』の原稿執筆を促進し、全原稿を脱稿できたことも、昨年度の収穫として挙げることができる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究遂行上の問題点は特になく、研究計画の変更はない。5年計画の2年度であり、次のような基本計画で研究活動を実施する。 1 各研究班からの報告。「財の法」ユニットから、①「財」班(不動産、金融資産、知的資産等を通じた人口減少社会における「財」概念の総論的検討。なお、対比のために、ロボット〔AI〕なども取り上げる。これは「人」概念とも関連する)、②所有者不明土地班(所有者不明土地、空き家)、③担保班(資産価値の下落と担保等)、④資産(patrimoine)班(充当資産、資産承継、負債と責任)、相続法ユニットから、①相続法班(高齢社会・人口減少社会における相続財産管理、相続放棄、対価相続論等)、②社会的インフラ班(相続における公証人・司法書士の役割、家庭裁判所論等)の報告を受ける。 2 外部研究者招聘として、財の法、相続法関係で2名を考える。現時点で考えているのは、松田貴文(名古屋大学)、西希代子(慶應義塾大学)の両教授である。外国からの招聘は、アメリカ(青木担当)、イギリス(原担当、リーディング大学のホプキンス教授が第1候補)、カナダ(山城担当)を考える。いずれも財の法関係の研究者を候補とする。また、昨年度の招聘が繰り延べになっていたドイツのホフマン教授の招聘も実施する。日程が過密化する危険があるので、相互調整に遺漏がないように努めたい。 3 新型コロナウィルス感染拡大の影響で、研究会の開催また外国人研究者招聘が予定どおりに実施することができるか、不透明なところがある。ズームでの研究会開催を含めて、代替措置を検討し、研究活動に支障が生じないように努める。また、代替措置如何によっては、旅費等の予算に執行残が出る可能性もある。そのような事態についても、適切な対応策を講じていくよう努めたい。
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Research Products
(82 results)