2019 Fiscal Year Annual Research Report
多文化共生社会の流動化と新しい人権政策・社会政策・入国管理政策に関する国際比較
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19H00581
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
飯田 文雄 神戸大学, 法学研究科, 教授 (70184356)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
辻 康夫 北海道大学, 法学研究科, 教授 (20197685)
米原 謙 大阪大学, 国際公共政策研究科, 招へい教授 (30137301)
早川 誠 立正大学, 法学部, 教授 (80329010)
津田 由美子 関西大学, 法学部, 教授 (30247184)
西山 隆行 成蹊大学, 法学部, 教授 (30388756)
浪岡 新太郎 明治学院大学, 国際学部, 教授 (40398912)
安井 宏樹 神戸大学, 法学研究科, 教授 (60396695)
塩川 伸明 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 名誉教授 (70126077)
月村 太郎 同志社大学, 政策学部, 教授 (70163780)
小川 有美 立教大学, 法学部, 教授 (70241932)
渋谷 謙次郎 神戸大学, 法学研究科, 教授 (50346277)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 政治哲学 / 政治史 / 多文化主義 / 政策研究 / 移民 / 人権政策 / 難民危機 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、多文化共生社会論を巡って、非正規入国者への対応が本格化する2010年代以降に生じた変化を、人権政策・社会政策・入国管理政策という3つの政策領域における多様な改革論争に則しつつ解明することを目指すものである。その中で、本年度は、非正規入国者の最も短期的な生存維持に関わる人権政策の改革論をとりあげ、以下の諸問題の考察を行った。 (1)本研究ではまず、政治哲学・政治史学等の領域で行われた、多文化共生社会における近年の人権政策改革を論じた多様な先行研究を幅広く収集し、その特色や問題点を研究参加者全員で批判的に検討した。その結果①従来の先行研究では、非合法労働・賃金搾取禁止や非正規入国者集団内部での女性・子供等に対する抑圧禁止などの禁止・規制を伴ういわば消極的な人権擁護政策に関しては、各国に共通の一定の普遍的合意の所在を指摘することが多い②逆に、医療・生活資金等の物質的補助を伴う人権政策に関しては、従来の先行研究は、受け入れ国の経済状況や多数派の対外国人感情などの状況依存的な地域毎の多様性を強調する傾向が強い、等の重要な知見が判明した。 (2)更に本研究では、2010年代以降の北米・西欧・東欧諸地域において、多文化共生社会の人権政策に生じた具体的変化や、その諸要因等について考察した。その結果、①非正規入国者の具体的な人権政策実施過程においては、政府や地方自治体等の公的機関は、そうした入国者の所在認知自体を拒否しがちであるため、その実施はNPOなどの民間団体に強く依存するが、その結果人権政策の強制力に限界が生じやすい、②非正規入国者の人権擁護策として一般的なシェルター・集住区に関して、その多数派社会からの抑圧抑制機能を評価する見解がある一方で、それが多数派社会との融和・統合を阻害し、シェルター内部での女性・子供等への抑圧を生むとの懸念も生じつつある、等の重要な知見が判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、当初の計画に従って、日本語での学会報告や研究論文・図書の公刊を相当数行った上で、外国語での研究報告も一定数行うことができた。加えて、イギリスのEU離脱交渉の予想外の難航に伴い、ヨーロッパ地域を中心とする各国で外国人の流入動向や対外国人感情に大きな変化が生じ、外国人の人権に関する紛争の増加や、多くの新論点の争点化がみられたが、本研究では、それら新論点についても、予算の一部を2020年度に繰り越して追加的な分析を加えて学会報告を行うことで、最新の論点の全体に及ぶ分析結果を得ることが出来たため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は当初計画に従い、近年の多文化共生社会の流動化と社会政策・入国管理政策の関係、及び多文化共生社会の政策形成システム全体の特色や日本の多文化化に関する諸問題等を順次考察する予定である。またその際、新型コロナウイルスの感染拡大に鑑み、現地調査の時期を可能な限り後にずらすなど、ウイルスの感染拡大状況を継続的に注視して必要な対応策を講じる予定である。
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Research Products
(61 results)