2019 Fiscal Year Annual Research Report
Empirical and Theoretical Research on the Community Mechanism by Behavioral Economics
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19H00599
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
大垣 昌夫 慶應義塾大学, 経済学部(三田), 教授 (90566879)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
星野 崇宏 慶應義塾大学, 経済学部(三田), 教授 (20390586)
窪田 康平 中央大学, 商学部, 准教授 (20587844)
大竹 文雄 大阪大学, 経済学研究科, 教授 (50176913)
奥山 尚子 大阪学院大学, 経済学部, 准教授 (80617556)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 行動経済学 / 共同体 / 国際比較 / 経済実験 / OECD Trustlab / 信頼 / 利他性 / 応報性 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度の主要な実績のひとつはOECDの Trustlab の制度を活用して日本で世界初のパネルデータを構築する計画のうち、当該年度に第1ウエイブのデータを収集した。Trustlab については本研究の研究協力者のFabrice Murtin (OECD, Statistics Diretorate, Head of Unit)らの2018年の OECD SOD Working Paper No.89 にプロジェクトの詳細な説明がある。 MurtinがリーダーとなってOECDが各国の研究者たちと共同で2016年11月から2018年6月までに7カ国(フランス、韓国、ドイツ、イタリア、スロベニア、アメリカ合衆国、イギリス)で実施したTrustlabの実験調査では、さまざまな実験を用いて利他性、応報性、協力、信頼性、信頼、を測定している。2つのモジュールがある。第1モジュールでは4つの経済実験で利他性などの非認知能力を測定し、第2モジュールではアンケート調査である。国際比較のための各国共通の核となる部分と、各国で研究者が自由に設定する部分がある。本研究では実験調査は国際比較を重視して核の部分を変更せずに用いている。アンケート調査で、核の共通質問に、本研究の目的のために世界観や小学生のときに受けた教育方法についての質問を加えている。本研究では当該年度にパネルデータの第1ウエイブを収集した。 もうひとつの主要な業績は、代表者らが、これまでにすでに収集を終えた日本と米国のホームスクーラーの親子ペアを対象とした実験のパネルデータのうち、米国のデータ分析を開始したことである。主要な結果は、日本での結果と同様で頑健性があることを確認した。日米国際比較研究をするときに、同じ宗教の人たちを対象に比較することが難しい。この研究では日米でキリスト教徒を対象にして比較している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当該年度実施計画のOECDのTrustlabの制度を活用したパネルデータ収集について当初の計画より早い進展があり、8月中旬までに第1回データ収集のための英語版の実験とアンケート内容がほぼ完成という成果を得た。この成果を踏まえて令和2年度に予定している第2回パネルデータ収集の準備を前倒しして、早期に2回のパネルデータ収集を実施できれば、より詳細なパネルデータの実証分析が可能となり、本研究目的である共同体メカニズムの研究のための国際比較データの構築とその実証分析がさらに加速すると期待できた。以上のように、本研究をより進展させることができるため、第2回パネルデータ収集の準備の実施に必要な調査委託費、旅費、物品費について前倒し使用申請を行ない、承認を受けた。このため第2回パネルデータ収集の準備を当初の計画より早く進めることができた。また、第1回パネルデータ収集を終え、年齢、性別、所得について代表性について、Trustlabの他の国々と同様の質のデータを得ることができた。 日本と米国のホームスクーラーの親子ペアを対象とした実験のパネルデータの研究については、申請時の計画では新たなアンケート調査を当該年度に予定していた。しかし、平成31年度の内定研究予算が申請予算よりも少なかったことと、Trustlabの調査委託費用には為替レートの変動などの原因による不確実性が大きいことから、当該年度の新アンケート調査は行わない研究計画に変更した。内定時の当初の計画としては、すでに収集を終えたデータ、特に米国のデータについて、日本のデータで行ってきたのと同様の分析をすることであった。計画どおり、この分析は終わり、主要な実験結果は日米で頑健であることを確認することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
Trustlabのデータ収集については、今後第2ウエイブの調査を6月頃に実施し、世界初のTrustlabのパネルデータを構築することを計画している。今後は第1ウエイブで収集した日本のデータを分析し、国際比較を行う計画である。懸念点はデータ収集を調査委託しているOECD、OECDがTrustlabのプラットフォームの開発と活用のために契約しているフランスのIT会社や日本を含む世界のインターネット調査会社が特に研究協力者のいるフランスで新型コロナウイルスの影響をさまざまに受けていることである。今後、影響がどのように変化するかによって、優先順位を決めて対応していく。場合によっては第2ウエイブの調査実施の延期、国際比較よりも日本に特有の研究分野での第1ウエイブのデータの分析を先に行うことなどで対応する。 代表者らが、これまでにすでに収集を終えた日本と米国のホームスクーラーの親子ペアを対象とした実験のパネルデータの研究については、日米比較を中心に分析を進める。日米の国際比較研究をするときに、米国ではキリスト教徒の割合が多く、日本では1%以下と少ないので、同じ宗教の人たちを対象に比較することが難しい。この研究では日米でキリスト教徒を対象にして比較することができる。当面は、特に世界観と親のしつけ行動との相関についてのデータ分析を進める予定である。宗教は同じであっても、世界観と親のしつけ行動には日米差があることを予想している。この予想通りの分析結果とはならないことも考えられる。いずれにしても分析結果に基づいて日米比較の論文を執筆し、学会やディスカッション・ペーパーでの発表によって広くコメントを求め、コメントに基づいて改訂した論文を学術雑誌に投稿する予定である。
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Research Products
(18 results)