2019 Fiscal Year Annual Research Report
社会的能力の特定化とその育成適正期および教育効果の検証
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19H00619
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
松繁 寿和 大阪大学, 国際公共政策研究科, 教授 (50219424)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 礼子 同志社大学, 社会学部, 教授 (90288986)
森 朋子 関西大学, 教育推進部, 教授 (50397767)
勇上 和史 神戸大学, 経済学研究科, 准教授 (90457036)
平尾 智隆 摂南大学, 経済学部, 准教授 (30403851)
梅崎 修 法政大学, キャリアデザイン学部, 教授 (90366831)
妹尾 渉 国立教育政策研究所, 教育政策・評価研究部, 総括研究官 (00406589)
ヴ マン・ティエン 公益財団法人アジア成長研究所, 研究部, 上級研究員 (80734045)
大谷 碧 慶應義塾大学, 経済学部(三田), 特任助教 (00823949)
川嶋 太津夫 大阪大学, 高等教育・入試研究開発センター, 特任教授(常勤) (20177679)
岡嶋 裕子 大阪大学, 経営企画オフィス, 准教授 (50761649)
柿澤 寿信 大阪大学, 全学教育推進機構, 講師 (70735315)
家島 明彦 大阪大学, キャリアセンター, 准教授 (00548357)
安部 有紀子 (小貫) 大阪大学, 全学教育推進機構, 准教授 (30553416)
和嶋 雄一郎 大阪大学, 高等教育・入試研究開発センター, 准教授 (20572093)
ALBERTINE SUSAN 大阪大学, 高等教育・入試研究開発センター, 特任教授(常勤) (30808580)
村澤 昌崇 広島大学, 高等教育研究開発センター, 准教授 (00284224)
白井 詩沙香 大阪大学, サイバーメディアセンター, 講師 (30757430)
堀 一成 大阪大学, 全学教育推進機構, 准教授 (80270346)
飯田 星良 追手門学院大学, 地域創造学部, 特任助教 (30846316)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 教育学 / 非認知能力 / 社会能力 / 成績 / パネルデータ |
Outline of Annual Research Achievements |
社会的能力の長期的な生成過程を解明し、さらに社会的能力が認知能力、特に学業成果、そして卒業後のキャリアにどのような影響をあたえるのかを探ることが研究の目的である。そのために、小・中・高・大の各教育期間において、社会的能力が学習やその他の活動によってどのように育成されるかを、生徒・学生レベルのマイクロデータを用いて検証する。まず、2019年度は、研究体制の整備と先行研究の吟味および必要な知識および技術の洗い出しと習得が目標とされた。 本格的調査に入る準備として、2019年度前半は、生徒や学生に関するマイクロデータを収集する対策と作業スケジュールを決定し、さらに、いくつかの作業グループに分け、担当する教育期を決めた。後半は、主に全教育過程から社会に出る段階まで社会的能力を一貫して計測できる指標の開発とその測定方法を議論し試行した。そのために、研究報告会を定期的に開き専門家を招くなどをして検討を重ね、アンケート項目等の洗い出しを行なった 一方、新たなデータが作成されるまでに、既存の資料やデータを用いて行える研究も進めた。特に、小学校期における教育や経験が持つ長期的効果の測定が、既存のマイクロデータを利用し進められ、学習以外の習い事が、非認知能力や社会的能力の育成を通じて、卒業後のキャリア形成にまで影響を及ぼしている可能性を示した。また、学校教育期間終了後にも効果を維持する教育の内容を補足するために、大学教育をキャリア形成の視点から見直す試みも行った。大学教育と社会で重視されるコンピテンシーの関係を分析した研究や、キャリア教育が学生の意識に与える効果を準社会的実験環境下で補足しようとする試みが進められた。これらの成果はいくつかの学会で報告されるとともに、専門雑誌に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019年度前半は、ほぼ計画通り、研究体制の構築と社会的能力指標の検討が行われた。義務教育期間に関しては、複数の自治体の教育関係団体との関係を構築し、生徒を対象とするアンケートの実施、および、学習成果に関するデータの継続的確保について協議した。また、教員経験者を対象に教育環境や学級の状況に応じてとられる学校・学級現場での対応についてのインタビューを行い、統計分析結果を解釈する際の留意点等を把握した。 高校に関しては、ある都道府県が全高校の生徒を対象に行った意識・行動調査の項目から社会的能力を捕捉できるかどうかを検討した。また、学習成果に関するデータの利用の可能性、さらに突合しパネルデータ化できるかも検討した。これらの点に加え、データの質や整備状況を確認するために、データセットの一部にアクセスし、非認知能力や社会的能力に関するアンケート項目と学業成績との関係に関して試験的分析を行った。 大学教育に関しては、複数の大学において、学生の属性、入試、学業成果に関するデータベースの作成と利用可能性を探った。また、2019年度新入生を対象に既存テストを利用して、社会人基礎力を測定する調査を複数回行うとともに、そのテストを開発した企業と調査項目に関する共同研究を行うこととなった。 ただし、2020年1月からのCOVID-19の感染拡大により、研究協力を依頼していた上記の自治体や教育委員会等における職務環境の変化や学校における年度計画や学事歴の変更等があり、研究計画の変更が必要となった。また、予定していた海外の研究協力者の招聘も不可能となった。加えて、研究対象大学での授業のオンライン化により、調査対象学生の確保や調査環境の確保が不可能となり、いくつかの調査の延期が避けられなくなった。
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Strategy for Future Research Activity |
第一に、COVID-19の感染拡大により生じた遅延を余儀なくされた作業に対応する。学校段階別に社会的能力の育成と認知能力に関するデータ収集・作成およびそれらを利用した分析作業に関しては、まず、関係団体・組織との協力関係の継続確認と研究体制および計画の見直しを行う。また、学校に出向いて行う予定であった聞き取り調査は、可能な限りアンケート調査等で代替する方向で検討する。 第二に、複数年度に跨がる追跡調査は、調査年度数を減らす一方、学校や関係組織内に蓄積されている過去のデータを掘り起こし補完的利用する可能性を探る。特に、高校段階においては、既存のデータの入手を働きかける一方で、新たな調査を開始する計画があることから、担当者を増加し研究体制の強化を図る。また、調査年度を1年ずらすことで対応が可能な調査は、新たに新入生の追跡を始め、各学校段階の前半と後半に分けた分析の可能性を検討する。 第三に、教育段階の接続に関する研究に関しては、前段階の学校からの入手を計画していたが、後段階に入学後に追加的なアンケート調査を行うなどで補完する。また、完全なデータの構築を待たず、アクセス可能なデータを利用し順次分析を始める。 第四に、比較的アクセスが可能な大学が保有するデータの統合作業を進め、パネル分析が可能なデータセットを作るとともに、一部のデータを利用して試験的分析を開始する。具体的には、出身地域、出身高校属性、入試成績等に加え、SSH・SGH 校出身、高校での探求学習の経験等に注目し、それらが入学後の成長に与える効果を補足する分析に着手する。また、卒業後の就職先と初任配属部門に関する追跡調査を可能とするために、関係組織・機関、あるいは、協力を依頼できる企業等との調整を進める。
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Research Products
(52 results)