2019 Fiscal Year Annual Research Report
Scaling theories of random quantum systems
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19H00658
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
大槻 東巳 上智大学, 理工学部, 教授 (50201976)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
羽田野 直道 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (70251402)
後藤 貴行 上智大学, 理工学部, 教授 (90215492)
SLEVIN KEITH 大阪大学, 理学研究科, 准教授 (90294149)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 量子相転移 / 普遍クラス / 臨界指数 / アンダーソン相転移 / トポロジカル絶縁体 / マルチフラクタル / ワイル半金属 / 非エルミート系 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は本課題が始まった年である。代表者の大槻は年度後半に北京大学,上海大学,Regensburg大学を訪れ,5年間にわたる本研究テーマの大まかな計画をブラッシュアップできた。実際に行った研究を以下に述べる。 1)ランダムなトポロジカル系の相図の提案:トポロジカル系は近年幅広い見地から研究されている。この課題ではランダムな量子系としてトポロジカル系の研究を行い,その相図を描いた。相図を決める際には,代表者が2016年から提案している深層学習を用いる方法を適用した。この方法は転送行列やエネルギー準位統計が適用しにくいランダム格子系(量子パーコレーション系)にも適用できるのが強みである(業績リスト[2,3])。特にトポロジカルな量子パーコレーション系に対して興味深い相図が得られた。 2)Wigner-Dysonクラス以外の普遍クラスの研究:従来のランダム量子系の普遍クラス,いわゆるWigner-Dysonクラスは,副格子対称性,粒子正孔対称性を考慮することでさらに拡張できる。これらの新しい普遍クラスはバンド中心だけに転移が現れるので,従来は取り扱いが困難であった。そこでエネルギーをバンド中心に固定したまま,ランダムネスを変えることでこの転移を起こすモデルを考案した。この新奇なモデルは乱れたノーダルラインWeyl半金属を調べていた時の副産物である。これより新奇な二つの普遍クラスの臨界指数を決定した(業績リスト[1])。 3)近藤温度の分布:アンダーソン転移では波動関数がマルチフラクタルになることが知られている。これは波動関数の振幅が非自明に分布するを示し,そのため,系に磁性不純物が存在した場合,その近藤温度が非自明な分布をする。この分布関数を数値的に決定した(業績リスト[4])。 こうした研究の傍ら,ランダムネスを含んだ非エルミート系やダイナミカルな系の研究の準備も行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り,これまで臨界指数が正確に求められていなかったWigner-Dysonクラス以外の普遍クラスの研究に取り組み,成果を上げることができた。ここで用いた手法は他の普遍クラスにも容易に拡張できるもので,今後の研究計画にも役立つと考えている。また,トポロジカルな量子パーコレーション系に関して,予期せぬ興味深い相境界の振る舞いを明らかにできた。これらの点から,当初の計画以上に進んでいると自己評価できる点がある。一方,2020年3月に予定されていた日本物理学会,アメリカ物理学会が新型コロナウィルス感染症で中止になったことで,発表や今後の発展について議論する場が失われた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画通り,Wigner-Dysonクラス以外の普遍クラスの臨界現象を研究する。成果1),2)で述べた手法は他の普遍クラス,および次元を調べる際にも簡単に修正・拡張できるので,積極的に行っていきたい。また,次年度から量子kicked rotorの研究を行う。さらに,非エルミート系におけるAnderson転移の研究も進める。初めはエネルギー準位統計を調べ,大まかな状況を明らかにして,その後,転送行列で高精度計算を行えるかどうかに挑戦する。また,標準的なWigner-Dysonクラスについても,並列計算を用いて臨界指数をより正確に決定する。
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Research Products
(23 results)