2019 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19H00671
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
松本 伸之 東北大学, 学際科学フロンティア研究所, 助教 (30750294)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 微小重力 / オプトメカニクス / 低散逸振動子 / レーザー溶接 / ナノファイバー / 光計測 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、これまでに観測されたことのないミリグラム程度の物体から生じる微小な重力の初観測を目指している。重力源は機械振動子であり、その隣に設置した別の機械振動子の変位を光共振器で精密に読み取ることで、重力を観測する。本年度は、重力観測の最大の障害となる振動子のブラウン運動の影響を抑えるために、低散逸振動子の改良を行った。 結果、グラムスケールより小さな質量スケールの機械振動子の中で最も小さな散逸を持つ振動子を実現した。開発した振動子は、ミリグラム程度の質量を持つ石英製の鏡に石英ファイバー(直径1マイクロメートル、長さ5センチメートル)をレーザー溶接したモノリシックな懸架鏡である。直径125マイクロメートルの比較的太いファイバーをヒート&プル手法によって細く引き伸ばすことで、上述の超細長線を作製している。低散逸化により、ミリグラムスケールの物体から生じる微小重力の観測が容易になるのみならず、ミリグラム程度の振動子の重心振動を量子制御することさえ可能となった。 到達した振動子の散逸は1マイクロヘルツであり、現在はおそらく溶接の際に生じる石英線表面のダメージが散逸を制限していると思われる。理論的な予想と比較して、100倍程度の悪化が生じている。さらなる改良のためには、溶接部の石英ファイバーの体積を増大することで、相対的に表面損失の影響を抑える方法が考えられる。そのためには、ヒート&プル手法のパラメータを最適化すれば良い。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
低散逸振動子の改良で大幅な進展が見られ、世界最高の低散逸化に成功した。光計測に基づく振動子のセンシングにおいて、その性能限界は揺動散逸定理から振動子の散逸で決まる。つまり、現時点において、本研究がもっとも高性能な微小重力センシングを実現できる可能性があるといえる。よって現時点において、研究の進捗状況は「(1)当初の計画以上に進展している」と判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
開発に成功した低散逸振動子を重力センサーにインストールし、実際に微小重力の観測に挑む。重力源の開発にはある程度成功しており、今後は重力源の電磁シールド、局所的防振装置の開発に取り組む。電磁シールドの性能を評価し、十分な性能を確認する。また、低散逸振動子を用いた重力センサーの微調整を行い、雑音を除去する。雑音の除去を終えたのち、両システムを結合し、微小重力の観測が実現する。
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Research Products
(4 results)