2020 Fiscal Year Annual Research Report
太陽風多価イオンのX線放射観測に対する地上実験からのメッセージ
Project/Area Number |
19H00701
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
田沼 肇 東京都立大学, 理学研究科, 教授 (30244411)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
飯田 進平 東京都立大学, 理学研究科, 助教 (20806963)
坂上 裕之 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 助教 (40250112)
中村 信行 電気通信大学, レーザー新世代研究センター, 教授 (50361837)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | X線天文学 / 中性原子ビーム / 半導体検出器 |
Outline of Annual Research Achievements |
太陽風に含まれている多価イオンと,太陽系の惑星間空間に最も多く存在している水素原子を,実際の太陽風と同じ400-800 km/sの速度で衝突させ,電荷交換反応によって生成する励起状態からの軟X線領域における発光スペクトルを測定することが本研究の目的である。多価イオンは電気通信大学に設置されている電子ビームイオントラップを用いて生成し,磁場によって狭い空間に閉じ込める準備が行われている。このイオンは100 eV以下の低エネルギーで運動しているので,平均すると空間に停止しているとみなすことができる。この多価イオンと水素原子を太陽風と同程度の速度で衝突させるために,高速中性水素原子ビームを準備するのが本研究の第1の課題である。そのために高強度水素原子イオンビームをマイクロ波放電型イオン源によって生成し,同時に生成する水素分子イオンを質量分析によって除外した後,原子イオンビームのみを希薄な気体を満たした容器に導入し,電荷移行反応によってイオンを中性化することで中性水素原子ビームを生成する。イオントラップは超高真空に保たれているので,中性化用の気体がイオントラップに入らないように差動排気が必要である。中性化に必要な気体圧力を検討した上で,二段の差動排気機構を備えた装置の設計を行い,部品の設計と製作を年度内に完了させた。また,X線スペクトルの観測に用いるシリコンドリフト型検出器を導入し,多価イオンと中性気体の衝突による発光スペクトルの測定を行った。以前に使用していた同種の検出器よりエネルギー分解能が高いことが確認され,今後の測定に大きな期待が持てる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度の研究計画変更による遅れを取り戻すべく努力はしたが,COVID-19への対応のために経験のないオンライン授業が求められ,その準備と実施のために通常よりも学内業務が増加した。そのために研究に割ける時間が激減したことで,装置の設計に必要な作業時間が限られた結果,昨年度の遅れを取り戻すことはできなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
中性水素原子ビーム源に必要な全ての部品の購入と製作は完了したので,今年度は組立および調整を行い,実際にイオン源を動作させて特性を確認し,中性気体との衝突による中性水素原子ビーム生成を行う。中性化用の標的気体としては水素原子とイオン化エネルギーが等しいメタンを考えていたが,過去の文献を調査したところ,水素分子であっても,断面積は2倍程度しか変わらないことが判明した。標的が軽いほど中性ビームの角度広がりが小さく押さえられることが期待できるため,メタンと水素分子の両方を用いて予備実験を行う。今年度内に都立大で可能な予備実験を完了させ,年度末を目指して電気通信大学への移設を予定している。電気通信大学では分担者が電子ビームイオントラップ装置に中性水素原子ビーム源を接続するための準備を行い,移設後速やかに測定を試みる。
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