2019 Fiscal Year Annual Research Report
衝突破壊の超高速X線トモグラフィーによる小惑星族の多様性に関する研究
Project/Area Number |
19H00719
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
荒川 政彦 神戸大学, 理学研究科, 教授 (10222738)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長谷川 直 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 主任研究開発員 (10399553)
保井 みなみ 神戸大学, 理学研究科, 講師 (30583843)
小川 和律 神戸大学, 理学研究科, 技術専門職員 (40509824)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 衝突破壊 / 再集積 / フラッシュX線 / トモグラフィー / 微惑星 / 熱進化 / 小惑星族 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、模擬ラブルパイル天体を用いた衝突破壊の3次元高速撮影を行い、衝突破片の速度ベクトルの解析方法を確立した。この実験では、10mmガラスビーズを115個最密充填に並べて模擬試料を作成し、その試料に対して、直径4.7mmのポリカ弾丸を衝突速度1~6km/sで正面衝突させた。その様子を2台の高速カメラを用いて、真横からと真上からの2方向からタイミングを完全同期させて撮影した。撮影速度は10万コマ毎秒とし、撮影した画像の画素数は>384x288pixelであった。この2方向からの画像を用いて各ビーズの速度ベクトルを求める方法を確立し、ビーズの速度分布を調べた。その結果、5km/sと6km/sの実験では細粒衝突破片により視界が邪魔されて飛翔するビーズを確認することは難しかったが、1~4km/sの衝突実験では、飛翔した多くのビーズの速度ベクトルを計測することができた。 これらの計測結果から、ビーズの重心系における速度とその速度よりも遅いビーズの積算質量との関係を調べて、積算質量が初期質量の50%に達する時の速度(中間速度)を求めた。この中間速度は衝突速度が1~4km/sと大きくなるにつれて1~5m/sと大きくなり、これまで求まっている凍結粘土や多孔質石膏よりも遅いことがわかった。これはラブルパイル天体が破砕される時は、他の始原天体と比べて再度ラブルパイル天体になりやすいことを示している。 さらに今年度は、水質変成した微惑星の模擬試料を用いた衝突破壊実験を行い、4方向からの同時照射によるフラッシュX線撮影を行った。この撮影画像を用いてトモグラフィー構築する解析の準備を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
フラッシュX線による撮影は、共同利用申請が必要な宇宙科学研究所でしか行うことができない。今年度はこの研究課題の初年度であったので、共同利用申請が間に合わず、充分なマシンタイムを確保することができなかった。それでも当初予定していたフラッシュX線4台の同時照射による撮影は数回実施することができており、この画像を利用して、今後、解析方法を確立して行く予定である。フラッシュX線による撮影はマシンタイムが限られるので、神戸大学で既存の高速カメラと完全同期が可能なカメラを購入し、2方向からの同時撮影を可能とするシステムを構築した。このシステムを用いて本研究の課題の一部として挙げているラブルパイル天体の質量ー速度分布の計測が可能となったので、一連の実験と解析手法の確立を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、宇宙科学研究所にフラッシュX線を利用するための共同利用申請を行い、充分なマシンタイムを確保する。その上で当初予定していた様々な熱進化段階にある微惑星の模擬試料を用いた実験を遂行する。一方、今年度、神戸大学に構築した、2台同期撮影可能な高速カメラを利用した研究も継続する。この高速ステレオ画像撮影システム専用の解析手法を開発し、衝突破片の3次元形状の構築とその速度測定を目指す。 4方向からのX線撮影画像を用いたトモグラフィーを実現するためには、その解析手法を早急に開発する必要がある。そこで開発を担当する新規の分担者を追加することにした。また、トモグラフィーの構築は大容量の計算を行う必要があるので、専用の計算サーバーを購入して対応することにする。 また、小惑星族の形成に関係する衝突破壊の重力再集積に関するシミュレーションは、スイス・ベルン大学のJutzi博士との共同研究で行うことを予定している。この共同研究を加速するために、2,3年度にはJutzi博士を日本に招聘する予定である。
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