2020 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19H00788
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
菊地 優 北海道大学, 工学研究院, 教授 (50344479)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡辺 宏一 清水建設株式会社技術研究所, その他部局等, 研究員 (10811094)
白井 和貴 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (20610968)
石井 建 北海道大学, 工学研究院, 助教 (50840550)
壇 一男 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 教授 (90393561)
齊藤 隆典 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, 建築研究本部 北方建築総合研究所, 主査 (90586497)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 免震構造 / 長周期地震動 / 大振幅地震動 / 耐震設計 / 地震防災 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、多様な特性を有する地震動に対処可能な次世代型の高機能免震構造の創出である。この目的を実現するために、多様な地震動の予測、および繰り返し変形に対処する高耐久免震構造と過大な地震入力に対処する変位抑制免震構造の開発の3項目を同時並行で実施する。 多様な地震動の予測については、現行の地震調査研究推進本部による強震動予測のための「レシピ」ではモデル化されていない地震発生層よりも浅い部分の断層のモデル化について検討した。この検討結果を踏まえて、内陸地震およびプレートの沈み込み帯で発生するプレート境界地震のうち地表断層をともなう地震のための「レシピ」の試案を提示し、今後の課題を整理した。 高耐久免震構造については、錫プラグ入り積層ゴムの大変形復元力モデルを新たに開発して、オープンソース構造解析システムOpenSeesに実装した。このモデルを既往の熱・力学連成挙動解析システムと組み合わせることにより、錫プラグ入り積層ゴムの熱・力学連成挙動解析が可能となった。弾性すべり支承の高耐久化については、すべり材の分散配置による熱拡散効果を解析的に検証した。さらに、画像解析による大変形時の積層ゴムひずみ分布評価については、前年度に続いて曲げ変形の出やすい2次形状係数の小さな積層ゴムの加力試験を新たに実施して、画像撮影を行いひずみ分布評価を行った。 変位抑制免震構造については、前年度の免震縮小試験体による加振試験を発展させ、総重量4tonの大型試験体を製作して、振動台による加振試験を実施した。大型試験体では、硬化型復元力装置に改良を加えたことで前年度の縮小試験体よりも理想的な硬化特性を実現することができた。この改良により提案システムで予想されていた高調波共振の発生を、実験でも確認できた。今後、この高調波共振の抑制方法を検討して、提案システムのいっそうの性能向上を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高耐久免震構造については、鉛プラグ入り積層ゴムのマルチプラグ化、および弾性すべり支承のすべり材分散配置による高耐久化検討を終え、錫プラグ入り積層ゴムの高耐久化検討に必要な熱・力学連成挙動解析システムまで完成した。弾性すべり支承の高耐久化に際しては、摩擦係数の各種依存性(面圧、速度、温度)を分離して評価するための加力試験方法を新たに考案して、加力試験を実施した。画像解析による積層ゴムひずみ分布計測は、新たに変形モードの異なる積層ゴムの加力試験を行い、変形画像を撮影し分析を終えた。変位抑制型免震構造については、大型免震試験体による振動台加振試験と解析による再現を完了した。
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Strategy for Future Research Activity |
多様な地震動の予測に関しては、2020年度に提示した試案に基づき、上町断層(逆断層)と日奈久断層(横ずれ断層)の強震動と永久変位の予測のための断層モデル、および千島海溝の巨大地震の断層モデルを設定し、地震動を計算する。また、断層近傍の地震動計算の課題を整理するために、経験的グリーン関数法に関する既往の研究をレビューし、課題を整理する。 高耐久免震構造については、2021年度は錫プラグ入り積層ゴムの高耐久化に取り組む。錫は熱伝導率が高い一方で降伏応力が高く、鉛に比べて発熱量は大きくなる。よって、鉛プラグ入り積層ゴムと同程度の減衰性能は鉛よりも細径の錫プラグで実現できることになる。今年度は細径の錫プラグ入り積層ゴムの繰り返し加力試験を実施し、前年度に開発した熱力学連成挙動解析システムによる試験結果の検証を経て、細径化による高耐久化の解析的検討を行う。 変位抑制免震構造については、回転慣性装置と硬化型復元力装置を組み合わせた変位抑制免震構造の実用性を検証するために、改良型の縮小試験体を作成し、長周期地震動および内陸地殻内地震動を入力して加振実験を実施する。振動実験は2021年11月を予定している。同時にオープンソース構造解析システムOpenSeesを用いて加振実験結果の再現を試み、解析モデルの妥当性についても検証する。
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