2019 Fiscal Year Annual Research Report
Disaster management of structures and infrastructures affected by the anticipated Nankai Trough earthquake for resilience enhancement
Project/Area Number |
19H00813
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
秋山 充良 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (00302191)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 良和 京都大学, 工学研究科, 教授 (10283623)
松崎 裕 東北大学, 工学研究科, 助教 (10506504)
越村 俊一 東北大学, 災害科学国際研究所, 教授 (50360847)
佐藤 靖彦 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (60261327)
本田 利器 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (60301248)
宮里 心一 金沢工業大学, 工学部, 教授 (60302949)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 南海トラフ地震 / 地震ハザード / 津波ハザード / フラジリティ / リスク / レジリエンス / 災害廃棄物 / 緊急仮設構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
2011年東北地方太平洋沖地震では,強震動と津波の作用により,東北地方太平洋沿岸部を中心に多くの構造物が損壊・倒壊・流出した.結果として,約2,300万トンにもおよぶ災害廃棄物が発生し,その処理は東北地方太平洋沖地震の影響を受けた地域の復旧・復興活動の大きな妨げとなった.自然災害発生後の回復性(復興活動の迅速化),すなわちレジリエンス強化のためには,災害廃棄物量を適切に推定し,その対処方法を震災前に議論することが重要である. 本研究では,2011年東北地方太平洋沖地震に比べて広範囲,かつ甚大な被害が懸念されている南海トラフ地震による津波災害廃棄物量をリスクアプローチに基づき評価した.既存研究では,予想される最大災害廃棄物量を仮定し,その前提のもと,廃棄物の処理時間や予算を最小化するための議論が行われている.対策に必要な予算や労働力の観点から,合理的な災害廃棄物の処理が可能なのであれば,その最大量を想定することは妥当である.しかしながら,南海トラフ地震に対して最悪の作用(強震動・津波)を想定すると,構造物被害が甚大となり,膨大な災害廃棄物量に対する対策を講じなければならなくなる.災害廃棄物量の大きさとその発生頻度の関係に基づき,災害廃棄物量の処理に関わる意思決定をすることが合理的である. 本研究では,現在得られる知見に基づき,起こり得る断層の動きから想定される津波高さを確率的に評価し(津波ハザード評価),その大きさの津波を受けたときの構造物の損傷可能性を推定し(津波フラジリティ評価),さらには,構造物の損傷から予想される災害廃棄物量の総数を算定(影響度評価)することで,リスクカーブ(災害廃棄物量の大きさと頻度の関係)を提示した.本研究の特徴は,構造物の被害数と災害廃棄物量の関係(原単位)を導入することで,津波による災害廃棄物量のリスクカーブを算定したところにある.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
南海トラフ地震による強震動と津波による被害は極めて甚大なものであると試算されており,そこからの早期復旧・復興を可能にする一層のレジリエンス強化が求められている.本研究では,これまでの研究活動,および地震・津波被災地の調査経験から, 【1】地域ごとの災害廃棄物量の予測と,それに応じた処理プロセスの事前検討 【2】地域ごとの損壊インフラ構造物数の予測と,それに応じた緊急仮設構造の事前製作 がレジリエンス強化に特に有効であると考え,南海トラフ地震の影響地域への実装を進めることを本研究の目的としている.構築してきたマルチハザード下にある構造物のリスク評価手法を応用することで,南海トラフ地震による災害廃棄物量および構造物の損壊数のリスクカーブを市町村別に作成し,それに応じた廃棄物処分場の最適配置や処理マニュアルの作成,あるいは,急速施工を可能にする緊急仮設構造の提案とその必要数の提示,までを行うことを当初の研究目標としている. 初年度は,研究業績に示したように,【1】についての成果を得ることができた.次年度は,津波由来の災害廃棄物を算定した今年度の成果に対して,強震動由来の災害廃棄物の算定法も確立し,【1】のリスクカーブの算定制度をさらに高めたい.また,プレキャストRC連結ブロックからなる緊急仮設構造についての実験的研究に着手する.これらは,当初に想定した通りのスケジュールであり,「おおむね順調に進捗している」と自己評価した.
|
Strategy for Future Research Activity |
・強震動および津波により生じる災害廃棄物量のリスク評価と処理プロセスの検討 兵庫県南部地震や東北地方太平洋沖地震,あるいは海外での災害事例をもとに,構造物の種別およびその損傷程度と,災害廃棄物量の関係を構築する.コンクリート構造物,土構造物,あるいは木造構造を対象としたデータベースを既に有する諸外国の研究者と協働する.そして,強震動,津波,および津波堆積物により生じる災害廃棄物量のリスクカーブを全市町村に対して算定したい.処分プロセスの最適化は,代表的な市町村を選択して検討する予定である.検討項目は,現有の処分施設の処理能力を超える災害廃棄物が発生する可能性,災害廃棄物処理時間を最小化するための処分場数と配置の検討,南海トラフ地震の影響を受けない地域にある処分場との協働,あるいは,FEMA-325(Debris Management Guide)などを参考として,災害廃棄物量の予測に基づいた仮処分場の事前確保の提案等を行う.
・被災地域の早期復旧を目的とした急速施工型(ACT)・緊急仮設橋梁の製作 緊急車両や復旧工事の通過のみを前提とした仮設橋梁を提案する.事前の製作・備蓄を想定したプレキャスト構造であり,被災後であることを想定した簡易かつ急速施工が可能な構造とする.実験的な試行錯誤を必要とするタスクであり,プレキャスト部材の構造性能評価の知見を有する研究分担者とともに開発に取り組む.まず,数年の供用期間や工事車両荷重,余震環境で生じる地震荷重などを整理し,緊急仮設橋梁に要求する性能を整理する.一般橋梁と比べ,想定荷重は小さく,また,使用性や耐久性などの性能は求めないことにより,構造設計を容易にする.提案橋梁は,レゴブロックをイメージしており,ハンドリングを考えて大きさを決めたブロックの組み合わせにより桁と柱部材を製作したい.
|
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
[Presentation] Risk Estimation of Bridges and Bridge Networks under Seismic and Subsequent Tsunami Hazards2019
Author(s)
Ishibashi, H., Kojima, T., Nanami, K., Akiyama, M., and Frangopol, D.M., 2019
Organizer
Proceeding of the 16th East Asia-Pacific Conference on Structural Engineering & Construction (EASEC-16)
Int'l Joint Research
-
-
[Book] 南海トラフ地震2019
Author(s)
秋山 充良、石橋 寛樹
Total Pages
152
Publisher
早稲田大学出版部
ISBN
978-4-657-19001-7
-
-