2021 Fiscal Year Annual Research Report
Disaster management of structures and infrastructures affected by the anticipated Nankai Trough earthquake for resilience enhancement
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19H00813
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
秋山 充良 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (00302191)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 良和 京都大学, 工学研究科, 教授 (10283623)
松崎 裕 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群), システム工学群, 准教授 (10506504)
越村 俊一 東北大学, 災害科学国際研究所, 教授 (50360847)
佐藤 靖彦 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (60261327)
本田 利器 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (60301248)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 南海トラフ / 災害廃棄物 / リスク評価 / 緊急仮設橋 / レジリエンス / プレキャスト |
Outline of Annual Research Achievements |
以下の2項目に対する検討を2022年度に実施した. ・確率論的アプローチにより,地震動と津波の発生から,それを受ける構造物の耐震・対津波安全性評価,被害を受ける構造物から生じる災害廃棄物量の推定,損傷する道路構造物の損傷と復旧を考慮した道路ネットワークを介した廃棄部の輸送,およびその処理完了までを再現する一連の数値シミュレーションを行うことで,南海トラフ地震発災時に災害廃棄物がどこにどれだけ発生し,どのルートで輸送され,いつ処理されるのかを予測し,災害廃棄物量処理に要する時間を推定できる手法を提案した.2011年東北地方太平洋沖地震の再現解析により,提案手法の妥当性を検証した上で,推定される処理期間に大きな影響を及ぼす数理モデルに関する考察を行い,災害廃棄物量の推定精度の向上が重要であることを示した.さらに,提案手法を南海トラフ地震の影響地域である三重県に適用することで,対象地域内で所定の期間内に処理できる災害廃棄物量やその発生確率を推定し,廃棄物処理における道路ネットワークの冗長性の重要性を考察している. ・2021年度の成果に基づき,プレキャスト橋桁部材として,鋼製シアキーおよびカプラーを用いて連結したプレキャストRCブロックの連結梁を作製し,曲げおよびせん断の四点載荷実験を行った.カプラーによるブロック間の引張力伝達によって鋼製シアキーの開口挙動を抑制できること,コンクリートと鋼製シアキーのヤング係数の差からシアキー部と梁部の境目に応力が集中することで損傷が予定外に進展することはないこと,などを確認した.なお,鋼製シアキーは,極めてコストがかかり,また,重量物となるため,被災後の状況を想定すると,より簡易な接続方法が望まれる.そこで,コンクリートシアキーを用いた検討も一部行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
南海トラフ地震による強震動と津波による被害は極めて甚大なものであると試算されており,そこからの早期復旧・復興を可能にする一層のレジリエンス強化が求められている.本研究では,これまでの研究活動,および地震・津波被災地の調査経験から, 【1】地域ごとの災害廃棄物量の予測と,それに応じた処理プロセスの事前検討 【2】地域ごとの損壊インフラ構造物数の予測と,それに応じた緊急仮設構造の事前製作 がレジリエンス強化に特に有効であると考え,南海トラフ地震の影響地域への実装を進めることを本研究の目的としている.構築してきたマルチハザード下にある構造物のリスク評価手法を応用することで,南海トラフ地震による災害廃棄物量および構造物の損壊数のリスクカーブを市町村別に作成し,それに応じた廃棄物処分場の最適配置や処理マニュアルの作成,あるいは,急速施工を可能にする緊急仮設構造の提案とその必要数の提示,までを行うことを当初の研究目標としている. 2022年度は,研究業績に示したように,【1】と【2】の内容について,一定の成果を得ることができた.2022年度に得られた成果とあわせ,次年度は,【1】と【2】の各項目のさらなる高度化を図る.これらは,当初に想定した通りのスケジュールであり,「おおむね順調に進捗している」と自己評価した.
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Strategy for Future Research Activity |
南海トラフ地震に対する防災力・減災力の一層の向上のため,以下の課題に取り組む予定である. (1) 津波による構造物の被害推計では,過去の被災情報から推定された構造物の津波フラジリティ曲線が対象地域に依らず適用されてきた.本研究では,過去の被災情報に加えて全国の自治体の土地利用情報を用いて,地域依存性を考慮した津波フラジリティ曲線をその適用先となる市町村と併せて提示できる手法を提案する.具体的には,土地利用情報を用いた主成分分析・クラスター分析から全国の自治体を地域性の類似度により分類し,グループ毎の被害データの集積から津波フラジリティ曲線を市町村別に算定する.適用例として,東北地方太平洋沖地震の被災データから地域依存性を考慮した津波フラジリティ曲線を同定し,それを用いた構造物被害棟数のリスク算定手順を示す. (2) 摩擦振子型免震機構は,振子の滑りによる地震時慣性力の低減,および滑り面の傾斜により残留変位の抑制を図る構造である.レベル2地震動に相当する地震力を受けた後でも供用性を確保できるダメージフリー構造となり得る可能性を有している.本研究では,緊急仮設橋が置かれる余震環境においても,一定の地震力に対する安全性を確保するため,摩擦振子型免震機構の緊急仮設橋への応用を検討する.具体的には,コンクリート製の下側滑り面に加え,ナイロン製の上側滑り面を摩擦振子型免震機構に設け,上下二面で異なる摩擦滑りを実現することで,一面のみを滑らせるときよりも大きな地震エネルギーを吸収できるようにする.さらに,急速施工を実現するため,摩擦振子型免震機構を支える橋脚をアーチ型のコンクリートブロック組積造橋脚とすることにより,滑り面から伝達される水平力に対して弾性応答する構造形態とする.この構造の耐震性能を確認するため,正負交番載荷実験を実施する.
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