2019 Fiscal Year Annual Research Report
Development of Innovative Chiral Molecules and Polymers Analysis and Separation Methods Based on Three-Dimensional Space Imaging
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19H00909
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
生越 友樹 京都大学, 工学研究科, 教授 (00447682)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
淺川 雅 金沢大学, ナノマテリアル研究所, 准教授 (90509605)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ピラー[n]アレーン / 高解像度AFM / 高速AFM / ホスト-ゲスト錯体 / キラリティー / アゾベンゼン |
Outline of Annual Research Achievements |
鏡像構造であるS体とR体の物質量、結合のエネルギーは等しい。そのためキラル分子1分子1分子を取り出して、分子レベルでそのキラリティーを判別することは最難関の課題である。例えば、キラルカラムや円二色性測定、NMRスペクトルによるジアステレオマー法を用いると、S体とR体の割合(鏡像体比)を決定できるが、これはすべての分子の平均値である。S体とR体のキラル分子が、分子レベルでどのように2次元基板上で空間分布しているかを直接観察することは困難である。 本研究では、S体とR体のキラル分子が分子レベルでどのように2次元空間分布しているかを可視化する技術の開発を目的とする。1年目の2019年度は、不斉炭素原子を有するカチオン性ピラー[5]アレーンの合成ができた。またアキラルなカチオン性ピラー[5]アレーン及び不斉炭素原子を有するカチオン性ピラー[5]アレーンを基板表面に配列させることに成功した。水溶液中で、アキラルなカチオン性のピラー[5]アレーンを配列させた基板にゲスト分子を添加することで、基板表面のカチオン性ピラー[5]アレーンにゲスト分子が取り込まれていく様子を高分解能AFM測定により可視化することが可能となった。また高速AFM測定を行うことにより、ゲスト分子が基板表面のピラー[5]アレーンの空孔内に取り込まれ、放出される様子を直接観察することに成功した。直接観察により、ゲスト分子の取り込み、放出は同等ではなくばらつきをもって起こることが明らかとなった。また光応答性ゲートとして働くアゾベンゼン基を有するピラー[5]アレーンについても、基板表面に吸着させる際の溶媒を上手く選択することで、基板表面に配列させることにも成功した。光照射に伴いトランスからシス体へと変化させることが期待でき、それに伴うAFM像の変化を調査中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
不斉炭素原子を導入した水溶性ピラー[5]アレーンの合成を行った。またこのピラー[5]アレーンを、イオン間相互作用を用いマイカ基板表面に配列化させることに成功した。また、アキラルなピラー[5]アレーンをイオン間相互作用により配列化した基板を用い、ゲスト分子を添加することで、基板表面上でのピラー[5]アレーンの空孔へのゲスト取り込みを高解像度AFMと高速AFMを組みわせて可視化することができた。ホストーゲスト錯体形成を直接可視化した研究はこれまでになく、高解像度AFMを用いることで初めて達成することができた。また高速AFMを用いることにより、ゲスト分子の取り込み、放出を直接観察することができた。当初予期せぬ実験結果として、ホスト-ゲスト錯体形成は、同等ではなくばらつきをもって起こることが明らかとなった。このことは、平均値を観測するNMRや光学測定からでは観測できない実験結果である。これらのことから、高解像度AFMと高速AFMを組み合わせた解析技術は基板表面上でのホスト-ゲスト錯体形成挙動を明らかとするための重要なツールとなることが明らかとなった。またアゾベンゼン基を導入したピラー[5]アレーンの基板配列化にも成功した。ゲスト分子のキラリティーの認識・保存に向けて、着実に研究を遂行することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度では、カチオン性ピラー[5]アレーンをアニオン性基板上にイオン間相互作用を用い配列化させ、AFM測定によりピラー[5]アレーンが基板上にどのように配列しているかを分子レベルで観察することに成功している。そこで、2020年度は、キラル分子の選択的取り込みの可視化と同時分離技術の開発を目的として、不斉炭素原子+カチオン性基+アゾベンゼンふたを導入したピラー[5]アレーンを合成する。アゾベンゼンふたを1つ導入する方法は不斉炭素を有していない場合にすでに成功していることから(生越ら、JACS, 2018, 140, 1544)、同様の手法により合成が可能であると思われる。不斉炭素原子+カチオン性基+アゾベンゼンふたを導入したピラー[5]アレーンを基板表面に配列化させる。予備的な実験で、カチオン性基+アゾベンゼンふたを導入したピラー[5]アレーンを用いて基板上で配列化することに成功している。そのため不斉炭素原子+カチオン性基+アゾベンゼンふたを導入したピラー[5]アレーンでも基板上での配列化は可能であると予測される。キラルゲスト分子の取り込みを3D-AFMにより可視化する。取り込みが完了した後に、紫外光照射を行うことで、キラル分子を閉じ込め、ラセミ体からキラル分子の取り込みの可視化と同時に分離する手法を確立する。分離についての確認は、2019年度に本研究での研究費を基に購入した円二色性分散計を用いる。
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