2020 Fiscal Year Annual Research Report
農業イノベーションの先端動向と農業・農村構造変動に関する学際的国際共同研究
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19H00960
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
南石 晃明 九州大学, 農学研究院, 教授 (40355467)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
飯國 芳明 高知大学, 教育研究部総合科学系黒潮圏科学部門, 教授 (40184337)
横溝 功 岡山大学, 環境生命科学研究科, 教授 (00174863)
立川 雅司 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (40356324)
羽藤 堅治 愛媛大学, 農学研究科, 教授 (50274345)
石井 圭一 東北大学, 農学研究科, 准教授 (20356322)
松下 秀介 筑波大学, 生命環境系, 教授 (50355468)
八木 洋憲 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (80360387)
佐藤 正衛 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 北海道農業研究センター, 上級研究員 (10355258)
長命 洋佑 九州大学, 農学研究院, 助教 (10635965)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 農林水産業経営 / 経営革新 / イノベーション / 情報通信技術ICT / バイオテクノロジーBT |
Outline of Annual Research Achievements |
第1に、イノベーションとデジタル農業の関連に着目して、作目別の農業イノベーションの詳細な事例分析を全体に位置づける枠組みを提示すると共に、独自の全国農業法人アンケート調査に基づいて、農業イノベーションの現状について明らかにした。例えば、プロダクト・イノベーションでは、新技術開発力に「強み」をもち、一定以上の売上高があり、売上高や利益率の明確な目標を設定している農業法人は、イノベーションの実現が進んでいる。また、作目や現状の利益率がイノベーションの実現に影響を及ぼしている。イノベーションが「阻害された」主要な要因は、「能力のある従業員の不足」、「新しい製品・サービスへの需要(売上規模)が不確実」であり、イノベーションの推進には人材育成が重要であることを示している。さらに、農業イノベーションを誘発する技術革新として注目されているデジタル農業の特徴、導入要因を効果やリスクについて明らかにした。 第2に、作目別に農業イノベーションの現状と課題を明らかにした。具体的には、精密農業の源流となった畑作、デジタル技術とゲノム技術の実用化が最も進んでいる酪農、近年、スマート農業の導入が注目されている稲作を対象とした。生産技術面で特徴が異なる酪農と稲作の比較検討により、デジタル農業とイノベーションの関係およびスマート農業技術の導入状況の違いの背景・要因を考察した。 第3に、海外主要国におけるイノベーションの新たな動向を対象として、政策の視点も含め、農業イノベーションの新たな潮流と社会変革について考察を行った。具体的には、OECD主要国を主な対象とし農業イノベーションの全体像を概観すると共に、ゲノム技術について現状と課題を明らかにした。さらに、ドイツやフランスについては、イノベーションと環境政策との関連に着目して現状と課題を明らかした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に基づいて、下記研究目的達成に向けて、情報収集、現地調査、研究成果の公表等が概ね計画通り進捗している。 先進国から途上国までを対象にして、学際的研究により農業イノベーションの先端動向と農業経営・農業構造・農村社会に及ぼす影響を解明するという研究目的に向けて概ね順調に進展している。第1に、日欧米の先進主要国を対象に、AI・IoTやゲノム編集等に代表される技術革新を含めたイノベーションの先端動向・過程と農業・農村構造に及ぼす影響について解明し、その成果を学会報告・論文や書籍として公表した。第2に、アジア途上国を主な対象としてリバース・イノベーションを含む農業イノベーションの萌芽に関する情報を収集し、その成果を書籍として刊行する準備を進めている。第3に、日本を対象にOECDオスロマニュアルに準拠した、独自全国アンケートの統計解析や先進事例分析を行い、他産業と比較した農業イノベーションの現状・特徴、農業内作目間の現状・特徴を解明した。また、スマート農業技術を活用した稲作経営における収量決定要因に関する実証的分析を行い、イノベーションの可能性を検討した。これらの成果を学会報告・論文や書籍として公表した。 このように、国際的に見た共通的傾向(普遍性)と各国・各作目の特徴(固有性)の両面から農業イノベーションの全体像を解明しつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
研究目的を達成するため、今後、以下の研究を実施する。ただし、新型コロナウイルス感染拡大状況に応じて、調査の方法やスケジュール等を柔軟に見直して研究を継続実施する。 今までの研究成果に基づいて、海外(先進主要国および途上国)における農業イノベーションの国際比較分析をさらに深化させる。まず、AI・IoT(情報科学)やゲノム編集(生命科学)等の技術革新を含めたイノベーションの先端動向・過程とイノベーションが農業・農村構造に及ぼす影響についてデータ収集およびデータ解析をさらに継続して実施する。国内調査では、既存の独自調査で得たデータの解析を継続し、イノベーションの取組み状況やスマート農業技術の導入について、さらに詳細な分析を行うと共に、最新状況を把握するため、新たな全国アンケートを実施する。また、稲作、畑作、畜産、園芸等の農業経営におけるスマート農業の先進取組み事例調査を継続し、さらに詳細なデータの収集と解析を進める。 海外調査では、現地情報の収集と解析を継続し、分析・考察をさらに深化させる。第1に、オランダ、ドイツ、スペイン、スイス等におけるRT、AI、IoT等の情報技術や品種改良等の技術革新、第2に、フランスにおけるアグロエコロジー研究の推進体制、技術普及システムのイノベーション、アグロエコロジー技術の経営適応、第3に、アメリカにおける水稲作経営を対象としたICTを中心とした技術導入、およびゲノム編集技術の研究開発および農業利用の現状等の調査分析をさらに進める。以上に加えて、発展途上国における農業イノベーションの萌芽の発見・分析では、中国、インドネシア、ベトナム、ラオス、カンボジア、ミャンマー等を対象に、農業イノベーションの萌芽の発見・分析や技術革新・普及の過程、農家の福利厚生や農村発展との関連も含めて、その特徴を解明するための基礎データの収集・解析を引き続き継続する。
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Research Products
(28 results)