2021 Fiscal Year Annual Research Report
予兆検知のための数理的手法の開発と経済学・医学への応用
Project/Area Number |
19H01114
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山西 健司 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 教授 (90549180)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
朝岡 亮 聖隷クリストファー大学, 看護学研究科, 臨床准教授 (00362202)
大西 立顕 立教大学, 人工知能科学研究科, 教授 (10376387)
谷戸 正樹 島根大学, 学術研究院医学・看護学系, 教授 (30284037)
渡辺 努 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 教授 (90313444)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 予兆情報学 / 異常検知 / 変化検知 / 緑内障進行予測 / 埋め込み / 経済予兆検知 |
Outline of Annual Research Achievements |
予兆情報学に関して、数理予兆情報学、医療予兆情報学、経済予兆情報学の各々で基礎的手法の開発及び応用研究を推進させた。 数理予兆情報学では、潜在空間埋め込みの次元推定について世界で初めての基準を提案し、Entropy誌に掲載された。また、潜在的構造変化検知の新しい手法としてカーネルコンプレキシティを提案し、IEEEBigData2021で発表した。双曲空間埋め込みの汎化損失を解析した論文をICML2021, Neurlips2021で発表した。 医療予兆情報学では、緑内障診断・予測において、網膜層厚から視野感度を推定するタスクと、後者の時系列から将来の視野感度を予測するタスクを同時に行う学習方式を提案し、世界最高の緑内障進行予測精度と視野感度推定精度を実現した。本結果をKDD2021で発表した。また、998眼の緑内障眼を用いた時系列の視野進行予測と591眼の緑内障めを用いたcross-sectionalに深層学習を用いて光干渉断層計からの視野感度の推定を統合して行うjoint task modelを構築した。結果、これまでの深層学習を用いたのみの視野感度推定に比べて有意な予測精度改善が見られ、Ophthalmology Scieneに掲載された。また、大規模視野データの解析により,中心30-2視野検査の信頼性指標に関連する因子のモデル解析を行った。 経済予兆情報学では、パンデミック下での人々の行動変容を、スマホの位置情報データを用いて計測する手法を開発し、法的拘束力を伴うロックダウンが行われなかった日本でも自発的な行動変容が起きたことを明らかにした。また、行動変容は性別年代別の死亡率と密接に関連していることを明らかにした。さらに、パンデミック下でのオンライン消費への切り替えがパンデミック後も続くか否かを評価するための手法を開発し、クレジットカードデータを用いた検証を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
数理予兆情報学では、潜在空間の次元推定、双曲空間埋め込みの性能解析、潜在構造変化検知といった基本技術を確立したことで、予兆情報学の基盤が大きく発展し、その効果は大きいと考える。また、医療予兆情報学では、網膜層厚と視野感度といったマルチモーダル統合分析において、初めてマルチタスク的手法を導入することで大きく前進した。 経済予兆情報学では、パンデミック下での人々の行動変容を解析する基礎を築いた。スマートフォンやクレジットカードデータを用いた行動変容の実験まで踏み込むことで大いに前進した。
|
Strategy for Future Research Activity |
数理予兆情報学では、潜在空間の次元推定を、潜在空間が双曲空間である場合に拡張して、双曲空間の効用についての理論を構築する。また、潜在空間構造変化検知に位相的データ解析手法を導入して、高精度化を図る。また、潜在変数モデルの推移過程を定量化するMixture Complexityを提案し、その理論的性能を解明する。 医療予兆情報学では、データを拡充するとともに、さらに精度の良い進行予測モデルを構築する計画である。また、眼科診療で得られる視野,眼底画像,健診環境で得られる眼科画像,頭部MRI画像,その他の全身データについてデータベース化を進める。全身検査パラメータによる眼球内の変化予測精度の向上を目指して研究継続を行う。 経済予兆情報学では、マスク着用や人混みを避けるなどの人々の社会的行動(social distancing)が今後いつまで続くのか、何を契機として消えるのかについて研究を行う。また、銀行送金に関する時系列データを取得し、現実のお金の流れの観点から経済危機を予兆検知する手法を開発する。銀行送金データの統計性を確認し、経済状況を反映したデータであることを検証した上で、予兆検知に向けた解析に取り組む。
|