2019 Fiscal Year Annual Research Report
Study for the early prediction system for the neurobehavioral toxicity induced by chemical exposure during development
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19H01142
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
種村 健太郎 東北大学, 農学研究科, 教授 (20332322)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
冨永 貴志 徳島文理大学, 神経科学研究所, 教授 (20344046)
平舘 裕希 東北大学, 農学研究科, 助教 (20649157)
中島 欽一 九州大学, 医学研究院, 教授 (80302892)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 環境化学物質 / 自然毒 / 発生発達期曝露 / 神経行動毒性 / 記憶異常 / 情動異常 / 神経回路機能 / 神経幹細胞動態 |
Outline of Annual Research Achievements |
自然毒として記憶喪失性貝毒とされるドーモイ酸を用いて、幼若期(生後2週齢)雄C57BL/6マウスへの単回強制胃内経口投与による成熟後の中枢神経系影響の検討を行った。尚、幼若期動物は、成熟期動物と比較して、こうした化学物質曝露に対して高感受性集団と考えられている。しかしながら驚くべきことに成熟期(生後10週齢)マウスへの単回強制胃内経口投与によって記憶異常が誘発される一方で、幼若期投与群には顕著な記憶異常が認められなかった。そのため、幼若期ドウモイ酸投与群を脳機能不全モデルとしての利用から、ドーモイ酸による中毒によって誘発される記憶異常の緩和法の探索研究へと発展できる可能性が高いと考えられた。一方、環境化学物質として、すでに予備検討結果から良好な結果として行動異常の顕在化を突き止めているネオニコチノイド系農薬のイミダクロプリドに加えてニコチンを用いた幼若期単回投与実験による中枢神経系への影響検討を進めている。現在、成熟期における行動異常に対応する神経回路機能解析、神経幹細胞動態解析に加えて、神経細胞突起タンパク動態解析を進めている。さらに、規制値レベルの低用量の有機リン系農薬アセフェートを周産期に慢性曝露し、その成熟後に顕在化する中枢神経系への影響について、雌雄の影響差を検討することを含めて、投与条件の設定を終えて周産期雌マウスへの飲水投与を開始した(妊娠後期は妊娠C57BL/6マウスを介した経胎盤曝露による投与となり、出生後は母マウスを介した経乳曝露による投与となる)。他に、離乳期(生後4週齢)マウスの行動解析条件を設定中であるとともに、効率良く研究を遂行するための、マウス用ランニングホイール装置を利用した環境エンリッチメント条件の最適化を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
1)幼若期の雄C57BL/6マウスへのドーモイ酸投与による成熟後の中枢神経系影響と行動毒性発現:記憶喪失性貝毒とされるドーモイ酸を用いた幼若期(生後2週齢)マウスへの単回強制胃内経口投与による成熟後の中枢神経系影響を検討した結果、成熟期(生後10週齢)マウスへの単回強制胃内経口投与によって誘発される記憶異常が認められなかったことから、幼若期の中枢神経系にドウモイ酸に対する高い抵抗性を持つ因子があるという仮説を立てて調査した結果、一部のアミノ酸成分に大きな差異があることが判明したため、成熟期マウスへのドーモイ酸投与後に、中和作用が期待できるか、すなわち記憶異常の顕在化を未然に防ぐことが可能かについても実験的検討を開始した。2)すでに予備検討結果から良好な結果が得られているネオニコチノイド系農薬のイミダクロプリドに加えてニコチンを用いた幼若期単回投与実験による中枢神経系への影響検討を進めている。現在、C57BL/6雄マウスの成熟期における行動異常として、条件付け学習記憶試験による記憶異常が顕在化することを実験的に確認するとともに、対応する神経回路機能解析、神経幹細胞動態解析に加えて、神経細胞突起タンパク動態解析を進め、評価基準の設定を進めている。3)低用量の有機リン系農薬アセフェートの周産期における飲水投与による慢性曝露実験として、規制値レベルの低用量の有機リン系農薬アセフェートを妊娠雌C57BL/6マウスへ飲水投与し、出産後の泌乳期にかけて飲水投与を続け、4週齢時に離乳し、成熟後の行動解析に向けて通常飼育を行っており、現在までのところ、通常飼育下における異常は認められない。
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Strategy for Future Research Activity |
発生発達期の化学物質曝露影響解析については、概ね、計画通りに推進しており、今後は早期暴露によって時間を経て顕在化する行動異常を未然に防ぐための予兆を科学的に検出できるか、さらに環境エンリッチメント(マウス用ランニングホイール装置を飼育ケージ内に設置することを予定している)によって緩和できるか、についての検討を開始する。また、ドーモイ酸中毒によって誘発される記憶異常を実験的に中和し、記憶異常の顕在化を防ぐことができるか、についても、本研究の狙いである「化学物質曝露による悪影響を緩和または予防する」ことに合致していると考えられるので、併行して推し進める。現時点で、もっとも有力な候補のアミノ酸について、ドーモイ酸投与後の生後10週齢の成熟期雄C57BL/6マウスに、経口投与することによって記憶異常の誘発を抑えることができるかを検討する。さらに、その条件の最適化に向け、記憶異常誘発抑制メカニズム解明についても遺伝発現変動解析による検討を進める。
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Research Products
(15 results)