2019 Fiscal Year Annual Research Report
Mutual Influences between the Vedic and Tantric Traditions in Modern Times of South India
Project/Area Number |
19H01195
|
Research Institution | Kyoto Bunkyo University |
Principal Investigator |
手嶋 英貴 京都文教大学, 総合社会学部, 教授 (30388178)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
梶原 三恵子 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 准教授 (00456774)
高島 淳 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 教授 (40202147)
藤井 正人 京都大学, 人文科学研究所, 教授 (50183926)
井田 克征 龍谷大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (60595437)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | ケーララ / タミルナードゥ / トラヴァンコール / アビシェーカ / 灌頂 / ヒンドゥー |
Outline of Annual Research Achievements |
本科研はこれまで協働することの少なかったヴェーダ儀礼とヒンドゥー教儀礼それぞれの専門家が緊密に連携して課題に取り組むことを重視している。その観点から、4月にはキックオフとなるセミナー「中世ヒンドゥー教とは何か」を、龍谷大学現代インド研究センターとの共催で行った。研究代表者・手嶋と研究分担者・高島、井田が中心となり、ヴェーダ儀礼とヒンドゥー教儀礼の共通性と差異とを討議した。その成果は、『ヒンドゥー教とはなにか』(高島淳・手嶋英貴 共著)(2020年3月)として同センターより刊行された。 2020年2月には、ケーララ州における現地調査を上記の三名で行った。まず南インドの中近世王権儀礼に関わる手書き写本の画像を、イリンニャーラクダ市に所在する旧トラヴァンコール藩王家の王室司祭家において収集した。次いでティルヴァナンタプラム(トリヴァンドラム)市に移動し、旧トラヴァンコール藩王家を研究するインド人学者3名と会談し、同市周辺の写本の所在情報等を聞き取った。さらに、同旧藩王家の領国であったタミルナードゥ州南部地域にも活動範囲を広げ、旧都パドマナーバプラム市、およびその周辺の主要寺院を尋ね、ケーララ州では立ち入りが禁止されている寺院内部の構造等を観察した。 これらの活動を行いつつ、今後の調査研究の進め方を3名で討議した。その結果、当初予定していた王権儀礼「バドラディーパ」ではなく、即位儀礼である「アビシェーカ」の儀軌文献収集と、その内容理解を優先することに計画を一部変更した。前者は即位後の儀礼であるが、後者は即位時のものであり、時系列的に先立つものをよく知ることで、後続儀礼の理解も進むとからである。また、前者は同旧藩王家に特有の儀礼だが、後者は汎インド的な広がりを持つことから、ケーララ式儀礼の成立的を明らかにすることはインドの他地域の王権儀礼に関する研究にも寄与することが期待できる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要にあるとおり、研究計画の2本柱である隣接領域研究者間の協働を現地調査の形で具体化し、かつその最初の成果公表となる共著の出版も果たせたからである。
|
Strategy for Future Research Activity |
2020年度から毎月の定例研究会を行い、ヴェーダの伝統とヒンドゥー教の相互影響を探るための基礎資料の整備と知見の蓄積・共有を進める。研究会では当面、基本的ヴェーダ儀礼である「新月満月祭」のテクスト読解を進める。本祭の内容はヴェーダ儀礼全体の理解に深くかかわると同時に、ヒンドゥー教の定期儀礼とも歴史的関係をもつことが予想される。本研究会では、研究協力者である井狩氏が新校訂版として出版準備を進めている『ヴァードゥーラ・シュラウタスートラ』のテクストを共有し、輪読する予定である。 また、2020年2月の現地調査を発展させるために、収集した写本画像の整理・解読を進め、かつその内容となるケーララ式アビシェーカ儀礼の歴史的ソースの特定に努める。すでに複数のプラーナ文献にその範型となる儀軌があることを確認した。今年度は、これらプラーナ文献の規定内容と、写本が記すケーララ的儀礼の共通点と相違点を明らかにしていくことが課題となる。
|
Research Products
(6 results)