2019 Fiscal Year Annual Research Report
Transgressive Nichirenism: Transnationalism, Gender, Spirituality
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19H01197
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 弘夫 東北大学, 文学研究科, 名誉教授 (30125570)
BURENINA YULIA 大阪大学, 日本語日本文化教育センター, 招へい研究員 (60763993)
大谷 栄一 佛教大学, 社会学部, 教授 (70385962)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 日蓮主義 / 近代仏教 / 日本仏教史 / 近代日本思想史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究プロジェクトは本研究は、トランスナショナル・ジェンダー・スピリチュアリティという三つの軸を視座として近代日本の日蓮主義(国家主義的な近代仏教思想)を再検討するものである。 従来の研究では、日蓮主義が日本におけるナショナリズムや国体論との関連のなかで取り上げられることが多く、その国家主義的思考が問題視されてきた。本研究ではこうしたいわば 「閉鎖的」なイメージと異なる、国や民族、ジェンダー、伝統など、様々なボーダーを超える、すなわち越境する近代仏教思想としての、新しい日蓮主義像を描き出すのが狙いである。 研究プロジェクトの一年度には、「トランスナショナル」と「ジェンダー」の二つの柱を中心にして研究を行った。チームメンバーが国際学会に参加、バンコクで開催したAAS-in-Asia2019のカンファレンスにて、「Rising Lotus: Rethinking Nichirenism in Twentieth Century Japan and East-Asia」というパネルで4人と一緒に日蓮主義のトランスナショナルな側面について発表し、議論を行った。台北市で開催した「 EACJS 4東アジア日本研究者協議会」で、「近代日本の日蓮主義における信仰とプラクティス」というパネルを行った。国内では、「日蓮主義勉強会」を2回行った。なお、山形県でのフィールドワークや、東京の国柱会での資料収集など、様々な基礎研究をし、重要な資料を集め始めた。メンバー達が、様々な論文や著作を出版し、その中に非常に注目を集めている、大谷栄一の『日蓮主義とはなんだったのか─近代日本の思想水脈』 などがある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
日蓮主義勉強会を2回と国際学会2回を行いの他に、メンバーがいくつかの発表を行い、多くのフィードバックを得た上で、様々な出版物の研究成果が実現出来た。 「トランスナショナル」のテーマに関しては、佐藤弘夫氏がその前近代と近代との連続について重要な研究発表をし、他のメンバーも日蓮主義の普遍性の可能性について研究を行い、シカゴ大学のジェームス・ケテラー先生から重要なコメントに基づき、日蓮主義のナショナリズムとトランスナショナルの両立は今後の課題になる。 日蓮主義と「ジェンダー」のテーマに関して、今まで完全に研究されていない日蓮主義の女性運動家を取り上げた。ゴダール氏が昭和初期の東亜連盟運動の小泉菊枝についての基礎研究を続け、研究発表を行った。ブレニナ氏が松平俊子についての基礎研究を行い、今まで研究されていない、独立した日蓮主義ネットワークを発掘した。なお、大谷栄一氏が日蓮主義者の女性観についての総合的な調査を行った。上述した研究が日蓮主義の再考のためだけではなく、今まで男性中心的に研究されてきた日本近代仏教の分野にも大きな影響を与えると考えられる。 研究プロジェクトの「トランスナショナル」、「ジェンダー」、「スピリチュアリティ」の三柱の中にトランスナショナルとジェンダーについての研究は大きく捗り、科研プロジェクトがとても順調に捗っていると言えよう。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウィラスにより、「日蓮主義勉強会第3回」とベルギーのゲント市で開催される予定であったのEAJSは延期せざるを得なかったし、資料収集は難しくなっているが、メンバーがそれぞれの研究を行い、8月から「日蓮主義勉強会」を再開する予定である。上述したように、2019年度は、研究の三本の柱の中に「トランスナショナル」と「ジェンダー」を中心にした研究を行ったが、2020年度は主に第三の柱、「スピリチュアリティ」の研究も取り組む予定である。今後の勉強会には、外部(歴史学や、政治学などの分野)からのサポートとフィードバックを得る予定である。なお、プロジェクトの目標としての学術雑誌の日蓮主義についての特集についての計画を立て始める。
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