2020 Fiscal Year Annual Research Report
L2 speakers in multi-layered language environments:Translanguaging conversation strategies
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19H01276
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
河合 靖 北海道大学, メディア・コミュニケーション研究院, 教授 (60271699)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大友 瑠璃子 北海道大学, メディア・コミュニケーション研究院, 准教授 (10815939)
佐野 愛子 立命館大学, 文学部, 教授 (20738356)
小林 由子 北海道大学, 高等教育推進機構, 教授 (30250517)
酒井 優子 東海大学, 国際文化学部, 准教授 (40780218)
飯田 真紀 東京都立大学, 人文科学研究科, 准教授 (50401427)
三ツ木 真実 小樽商科大学, 言語センター, 准教授 (80782458)
山田 智久 北海道大学, 高等教育推進機構, 准教授 (90549148)
杉江 聡子 札幌国際大学, 観光学部, 准教授 (90795048)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 多層言語環境社会 / トランスランゲージング / タンデムラーニング / 第二言語話者像 / 言語混交会話方略 / 母語話者評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、社会環境の変化に伴い多層言語環境化が進む日本において、言語の混合使用に対する評価を見ることで、日本人が持つ第2言語話者像の変化を予測することを目的としている。5年計画の最初の2年は、第1フェイズとして、第2言語話者の会話におけるこれらの会話方略の使用状況を先行研究を参考にしながら考察し、そこに見られるコード・スイッチングの特徴を分類する予定であった。1年目に採取した留学生と日本人学生がタンデム・ラーニングを行うデータから、意味交渉を中心に考察を行ったが、2年目は新型コロナ肺炎感染拡大によりタンデムラーニングによるデータの追加収集ができなかったため、YouTubeおよびPodcastに公開されている言語混合使用を伴う動画を対象として、文末表現、相槌やフィラーなどを含めて考察した。第1フェイズの成果は、多層言語環境研究国際シンポジウム「多様性と言語」(北海道大学大学院メディア・コミュニケーション研究院主催、2021年2月21日、オンライン開催)のなかで、Chui Ling Tam, and Yasushi Kawai (Hokkaido University): Classifying translanguaging interactions in YouTube videos and Podcast audio files.および、杉江聡子(札幌国際大学)・三ツ木真実(小樽商科大学)「タンデムラーニングにおけるトランスランゲージングを考える」として発表された。これらの研究により、両言語のモノリンガル話者を含めた"inclusive"なtranslanguagingを目指す会話方略の提案や、translanguagingが第2言語学習の促進にどう貢献しうるかの考察が行われ、本研究の第2フェイズである言語混合使用の動画作成と日本語母語話者による評価への橋渡しがなされた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度に採取したトランスランゲージング場面の会話データについてさらに分析を続けたが(杉江・三ツ木、2021)、追加収集しようとしたタンデムラーニングの会話データが新型コロナ肺炎感染拡大の影響により採取できなかった。しかし、インターネット上の映像メディアにはトランスランゲージング的な言語使用を紹介する動画素材が数多く公開されており(大友、2020)、これを使用することでタンデム・ラーニングのトランスランゲージング場面を採取する代替とすることが可能であると判断した。インターネット上に公開になっているYouTubeの動画、あるいはPodcastのファイルの中から、2言語を行き来するコミュニケーションを行っているものを対象として、コード・スィッチングの様子を先行研究をもとに分類するとともに、第2フェイズで作成する会話方略の動画につながる考察を行うことができた。(Tam & Kawai, 2021)また、多層言語環境における言語使用についてできるだけ包括的かつ複眼的に考察できるように、異なる言語の文末表現の比較分析(飯田、2021)や、タンデムラーニングにおける言語選択(山田、2021)、外国語学習の協働学習場面における母語使用の機能的考察(酒井、2020)などの基礎研究を合わせて実施した。さらに、日本の大学教育の文脈でデータを収集し、第2言語教育との関連のなかで研究を進めることについての研究の意義を考察するために、多層言語環境の進展の状況やそこでの学習者の状況について考察が行われた。(河合、2020、小林、2020、2021;佐野、2020;杉江、2021)成果の多くは口頭発表するにとどまり、論文としてまとめたものは2編となった。3年目から本研究の第2フェイズに入る予定であるが、トランスランゲージング的会話方略を示す動画作成と、第1フェイズの成果の論文執筆を、同時並行で行っていく。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度から始まる第2フェイズでは、第1フェイズで行った考察に基づいて、文末表現,相槌やフィラー、 意味交渉のコード・スイッチングを、トランスランゲージング的言語混交会話方略として評価者に見せるための刺激会話ビデオを製作する。3年目の目標としては、この動画の完成を目指す。4年目以降に、これを見せながら日英両言語の母語話者の評価者にインタビューを行い、その評価や理由を記録するが、本年度はパイロット・スタディとして、作成中の動画を評価者に見せながら改良を行っていく。結果は,評価者の属性に注目して量的に比較した後、理由をインタビューデータを質的に分析して考察する予定であるので、どのような属性を考慮したらよいか、パイロット・スタディを通して考えていく。モノリンガルの評価者よりバイリンガルの評価者の方がトランスランゲージング的な言語使用を志向すると予測する。 研究分担者が、所属変更により札幌のほか東京、京都、福岡に分散したため、テレビ会議室によるオンラインの研究会、およびシンポジウムにより研究を進めていく。新型コロナ感染拡大の状況を見ながら、可能であれば上記どこかの都市で対面による研究会を実施したい。
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Research Products
(14 results)