2019 Fiscal Year Annual Research Report
異文化理解における外国語教科書の役割ー中国語・ロシア語・朝鮮語を対象としてー
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19H01282
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
王 周明 大阪大学, 言語文化研究科(言語文化専攻), 准教授 (30512743)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
ヨコタ村上 孝之 大阪大学, 言語文化研究科(言語文化専攻), 准教授 (00200270)
夏 嵐 大阪大学, 言語文化研究科(言語文化専攻), 特任准教授(常勤) (10467095)
生田 美智子 大阪大学, 言語文化研究科(言語社会専攻、日本語・日本文化専攻), 名誉教授 (40304068)
藤本 和貴夫 大阪経済法科大学, 公私立大学の部局等, 教授 (70029734)
植田 晃次 大阪大学, 言語文化研究科(言語文化専攻), 教授 (90291450)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 異文化理解 / 外国語教科書 / ロシア語 / 中国語 / 朝鮮語 |
Outline of Annual Research Achievements |
二度も繰越となった本年度はコロナ禍の影響で対面活動を控える中、主に各自のテーマに沿って個別に研究活動を続け、ワークショップを2回実施した。 王は論文を2つ発表して、最初に北京官話を書名にした明治期の漢訳中国語教科書『北京官話伊蘇普喩言』について、書籍完成に関わった西洋・日本・中国という多文化的要素それぞれ果たした役割、そして口語性の関連問題として、言語使用の多様性・僻字の注釈・序文間の差異の確認を通して北京官話という名称を固持した理由を明らかにした。植田は研究ノートを2つ発表して、2000年以来日本で発行された朝鮮語テキストを対象として、朝鮮文字による日本語表記法の記述にみられる諸事象を規範と言語事実のはざまという視点から、また示された朝鮮半島に関わる地図を朝鮮語にまつわる現実と理念のはざまという視点から考察し、言語観・言語文化圏観について検討した。生田は著書にてロシア語教師や日本語教師、通訳が多く含まれる、シベリアに抑留された女性を考察し、異文化理解における外国語教育の問題に触れた。藤本は著書にて「革命の外交官―アドリフ・ヨッフェ」を執筆して、革命家兼外交官であったヨッフェの生涯を日本との関係を通して特徴づけてみたほか、論文を発表してソ連沿海地方紙の紙面の内容分析によって、政府が日ソ戦争開始の正当性を如何に国民に説明しようとしたかを明らかにした。ヨコタ村上はロシアの図書館にて調査を行い、外国語教科書における異文化理解の研究に資する多くの資料を閲覧・複写することができ、それを論文にまとめる作業を進めている。夏嵐は曹禺の四幕戯曲『雷雨』の台本が日本で数種の中国語教科書にされる際に、その中の異なる注釈に反映される編集者の作品の読み方に注目して考察している。 その他、日本で出されたロシア語・中国語教科書のデータベースを初歩的に構築でき、朝鮮語の部分は次年度の完成を目指している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
コロナ禍の影響で予定していた海外調査・研究発表のスケジュール等が大きく乱れてしまったために、当初の研究計画を順調に進展させることはできなかった。。特に2020年2月以降、中国や台湾、韓国への渡航が全くできなくなってしまったために、現地でなければ手に入らない情報にはアクセスできない状態が続いている。 しかし、小規模な対面ワークショップを2021年7月に、オンラインワークショップを2021年10月に実施し、着目すべき点、採るべき方法論を具体的に検討し統合するよう意見交換が繰り返して行われた。また、日本で出されたロシア語・中国語教科書のデータベースは収集した資料とインターネット上のリソースを利用して初歩的に構築でき、朝鮮語教科書のデータ入力も進んでおり、次年度に完成する予定。
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Strategy for Future Research Activity |
今年について、コロナ禍の状況が改善され次第、海外への出張は地域によって徐々に可能になろうと見込んでおり、規模な対面とオンライン会議を併用して共同研究を続けてゆきながら、これまでにやむを得ず中止・延期になった研究会・出張による調査を速やかに再開する予定。 そして、外的変数に左右されないように、先ず、すでに論文にまとめる作業や考察が進んでいるものを研究成果としての公表を目指す。それから、日本で出されたロシア語・中国語・朝鮮語教科書の最新情報を随時追加補足しながら、朝鮮語教科書のデータベースが初歩的構築され次第、総合的に再検討・試行・改良を行う。その上で、複数の言語が関わり、各自の研究テーマの着眼点や研究対象の出版年代などが異なりやすいため、今後、偏らないように繰り返して調整し合いながら研究を進めて行く。
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Research Products
(9 results)