2020 Fiscal Year Annual Research Report
異文化理解における外国語教科書の役割ー中国語・ロシア語・朝鮮語を対象としてー
Project/Area Number |
19H01282
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
王 周明 大阪大学, 大学院人文学研究科(言語文化学専攻), 准教授 (30512743)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
ヨコタ村上 孝之 大阪大学, 人文学研究科(言語文化学専攻), 准教授 (00200270)
夏 嵐 大阪大学, 人文学研究科(言語文化学専攻), 特任准教授(常勤) (10467095)
生田 美智子 大阪大学, 人文学研究科(外国学専攻), 名誉教授 (40304068)
藤本 和貴夫 大阪経済法科大学, 公私立大学の部局等, 教授 (70029734)
植田 晃次 大阪大学, 人文学研究科(言語文化学専攻), 教授 (90291450)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 異文化理解 / 外国語教科書 / ロシア語 / 中国語 / 朝鮮語 |
Outline of Annual Research Achievements |
二度の繰越となった本年度はコロナ禍の影響で対面活動を控える中、前年度に引き続き、主に各自のテーマに沿って個別に研究活動を続け、そしてワークショップと公開セミナーを1回ずつ実施した。 王は論文2つを発表して、1つは漢学が再興された江戸時代に発足した中国語教育に着目して、その教科書の形式・内容の変遷を江戸明治時代の漢文背景と結びつけて考察してみた。もう1つは1950年代後半~80年代前半にかけて日本に伝わってきた「中国語」と「中国」とは如何なるものかについて、『中国語教科書』と『簡明漢語三十課』を言語本体と編集事情の両方からの検討を通して解明を試みた。植田は論文1つを発表して、高等教育を念頭に、「外国語をなぜ教える/学ぶのか」という問題意識の下に、歴史と変化のはざまという視点から、朝鮮語の呼称をめぐる先行研究の示す問題点を手掛かりに、2020年以降刊行の朝鮮語テキスト60冊の書名・副題・はじめに類での呼称に現れた言語観・言語文化圏観について検討を試みた。生田は記念文集に論文1つを発表して、ロシアの言語学者ネフスキーが執筆した旅日記の中にある教科書の問題を検討した。藤本は論文1つを発表して、プーチ大統領のウクライナ侵攻の論理を、国際関係、ロシアとウクライナの歴史を通して分析し、他方でロシア国内での戦争反対の動きと今後の戦争の行方を考察した。夏嵐は論文1つを発表して、中国人作家の書いた脚本を中国語のテキストとして使用する試みを重ねてきた経験を踏まえて、どのような作品がテキストに適するのか、検証を行った。ヨコタ村上は2つの研究発表を行い、その成果の内容を学会誌に掲載するべく準備を進めている。 その他、日本で出された露中朝三言語の教科書のデータベースについて、前年度に初歩的に構築できたロシア語・中国語の部分は最新情報を随時追加補足し、朝鮮語の部分は初歩的に構築できた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
長引くコロナ禍の影響および2022年2月に勃発したロシアのウクライナ侵攻により、予定していた海外調査・研究発表のスケジュール等が乱れつつあったため、当初の研究計画を順調に進展させることはできなくなり、研究の進捗に障害が出た。 そこで、海外出張困難の影響を最小限にするために、国内の資料を用いての分析考察を中心に進め、すでに作成していたデータベースなども活用して、露中朝三言語の教科書における異文化理解の問題を、かなりの程度まで進めることができた。これまでに繰り返して検討してきた着目点や方法論の統合を実践しながら、学術論文の公刊と学会などの研究発表のほか、小規模な対面ワークショップの実施(2022年6月)と公開セミナー(2023年2月)の開催を通して、着実に業績を伸ばすことができた。 また、日本で出された露中朝三言語の教科書のデータベースについて、前年度に初歩的に構築できたロシア語・中国語の部分は校正の上で更なる補足・修正を行い、朝鮮語の部分は初歩的に構築できた。三言語の教科書のデータベースとも来年度に最終的に完成して公開する予定。
|
Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる今年において、複数の言語が関わる、各自の研究テーマの着眼点や研究対象の出版年代などが偏らないよう調整し合いながら共同研究を続けてゆき、これまでにやむを得ず中止・延期になった研究会・出張による調査を速やかに再開する予定。 上記と同時に、外的変数に左右されないように、先ず、優先的に学会等で口頭発表済みの研究内容などすでに論文にまとめる作業や考察が進んでいるものを研究成果としての公表を目指す。それから、日本で出されたロシア語・中国語・朝鮮語教科書のデータベースの公開を目指して、最新情報を随時追加補足しながら、最終的な検討・試行・改良を行う。その上で、研究の回顧と展望を兼ねる総括として、外部の研究協力者を招いてシンポジウムまたは講演会を企画する予定。
|
Research Products
(15 results)