2020 Fiscal Year Annual Research Report
木曽三川流域における治水関係文書の高度活用に関する研究
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19H01306
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
石川 寛 名古屋大学, 人文学研究科, 准教授 (30612527)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
秋山 晶則 岐阜聖徳学園大学, 教育学部, 教授 (40293691)
斎藤 夏来 名古屋大学, 人文学研究科, 教授 (20456627)
池内 敏 名古屋大学, 人文学研究科, 教授 (90240861)
服部 亜由未 愛知県立大学, 日本文化学部, 准教授 (70708370)
田中 隆文 名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (40192174)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 日本史 / 史料学 / 旗本高木家 / 木曽三川 / 治水 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、自然災害の歴史分析の一環として、木曽三川流域に残る治水関係文書の体系化と共有化による研究基盤の整備を図り、統合される歴史資料を活用して、近世から近代初頭(17~19世紀)における自然災害と地域の関係性解明につなげることを目的としている。そのため本年度は以下の調査・研究をおこなった。 流域の治水を管掌した旗本高木三家に関する資料は、名古屋大学附属図書館が所蔵する西高木家文書については河川関係資料の撮影、特に大型の河川絵図を集中的にデジタル撮影した。それを元に絵図の年代比定と近世の河川様態の分析を進めた。東高木家治水文書(個人蔵)については、デジタル撮影した資料の目録採取に取り組み、内容把握に努めた。名古屋市蓬左文庫が所蔵する東高木家文書については、木曽川河口新田関係文書の調査をおこなった。 災害復旧に動員された諸大名文書について、山口県文書館所蔵資料および岩国徴古館所蔵資料を調査し、デジタル撮影を済ませた。博物館や個人が所有する流域の文書群については、名古屋市博物館の治水関係資料を調査し、また大榑川洗堰組合を中心に資料の収集および整理・検討をおこなった。 災害資料の調査と分析について、木曽三川上流の土砂災害やその対策に関して現地調査と資料収集をおこない、また明治30年代前半における河川行政(木曽川や矢作川)をめぐる県庁、県会の動向についても資料調査をおこなった。このほか、新出の河川絵図等の収集および木曽川通図の修復をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
旗本高木家に伝来した西高木家文書については、大型河川絵図を含む河川関係資料705点を新たにデジタル撮影し、宝暦年間のものを中心に河川絵図の年代比定をすることができた。また、流域治水資料統合の一環として、東高木家文書の東高木家治水文書(個人所蔵)と堤方役所文書の追加撮影をおこない、東高木家治水文書(個人所蔵)は1947点、堤方役所文書は2304点を詳細な内容目録を採取した。 諸大名文書については、山口県文書館および岩国徴古館において手伝普請に関する毛利家・吉川家の資料90点を撮影することができた。流域の資料については、名古屋市博物館が所蔵する資料の中から河川関係絵図59点を確認した。新出の資料として大藪村川並図4枚、多芸郡有尾村普請絵図1枚、木曽三川普請関係絵図類、高木家書状を収集するとともに、犬山から鯏浦までを描いた木曽川通絵図のうち2枚を修復した。 災害と地域の問題について、明治30年代前半における河川行政をめぐる検討から県令・郡長の大幅な更迭にいたる過程と問題点を確認することができた。また、明和9(1772)年に飛騨国益田郡内で発生した「下呂抜け」と称する出水による山崩等の土砂災害について現地調査をおこない、土砂災害のイベントと下流域の治水との関連性について検討した。 このほか、『古文書・古絵図で読む木曽三川流域』の執筆、高木家文書『御用日記 宝暦四年』の翻刻を進めた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、木曽三川流域の治水関係文書について内容調査・年代比定・データ収集・デジタル撮影を進め、収集した文書群相互の関連性の分析と統一した分類項目の作成をおこない、関連文書を統合したデータベースの作成をめざす。その成果をもとに、収集蓄積された情報やデータベースを活用した研究展開をおこなう。 そのため、引き続き、近世を通じて流域の治水を管掌した旗本高木家の文書群、独自の治水仕法を生み出した美濃郡代の笠松陣屋堤方役所文書、災害復旧に動員された諸大名文書および資料館や個人が所有する流域文書群や大榑川洗堰組合資料、近世・近代の土砂災害や河川行政に関するさらなる調査・収集に取り組み、資料情報の蓄積を進める。 このうえで、所蔵機関および個人所有者との十分な協議、取り決めをおこない、関連文書群のデータベース化を進めるとともに、木曽三川流域史の構築に向けた共同研究を計画している。
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Research Products
(3 results)