2020 Fiscal Year Annual Research Report
中国古代軍事史の多角的検討-「公認された暴力」のありか
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19H01318
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
宮宅 潔 京都大学, 人文科学研究所, 教授 (80333219)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐川 英治 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (00343286)
森部 豊 関西大学, 文学部, 教授 (00411489)
丸橋 充拓 島根大学, 学術研究院人文社会科学系, 教授 (10325029)
佐藤 達郎 関西学院大学, 文学部, 教授 (30340623)
鷹取 祐司 立命館大学, 文学部, 教授 (60434700)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 中国古代 / 軍事史 / 暴力 / 制度史 / 社会史 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に引き続き、新出史料の読解を進めるとともに、メンバーによる研究発表を行い、相互に意見を交換し、研究の方向性を固めてゆくことに努めた。 新史料の読解については、京都大学・人文科学研究所において毎週研究会を開催し、岳麓書院所蔵簡の秦律令を読み進め、訳注を作成した。本年度作成分の一部は、「岳麓書院所藏簡《秦律令(壹)》訳注稿 その(三)」として、『東方学報』誌上に掲載された。そのなかには「奔警律」のように、非常動員した兵士を辺境に送り込む際の手続きを記した条文も含まれ、秦の軍事制度を知るための、新たな手がかりとなっている。 研究発表については、丸橋・藤井・古勝・宮宅が各自の研究テーマに関して順次報告した。たとえば丸橋は、「長安西方の備え―「唐蕃戦争」を手がかりに―」という題目で、長安から西北方面へ向かう進軍ルートについて分析を加えた。これは前年度、科研の経費を用いて実施した現地調査に基づくものである。一方、古勝は「南北朝時代における仏教と軍事」という題目で、僧侶の軍事顧問としての役割や、仏教の教義と暴力との関係などを論じた。これは前年度に提案された、「武力=公認された暴力」という分析視角とも深く関わる研究テーマである。 さらに2020年12月には、海外の研究パートナーである韓国・ソウル大学が「秦漢法律国際学術会議」を開催し、これに宮宅、および海外共同研究者の陳偉(中国・武漢大学)がともに参加し、研究発表を行った。宮宅の報告は、新たな領土に進駐した秦の占領軍が、いかなる手順を踏んで次第に撤退し、それに対応するかたちで組織された行政機構が、いかにしてその業務を開始したのかを整理したものである。 以上に加えて、2020年10月には一般人向けの連続セミナー「秦帝国の実像―同時代資料が語る始皇帝の時代」(計四回、オンライン)を開催し、研究の一端を広く社会に向けて発信した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルス感染症の拡大により、2020年度の初頭より対面での研究会開催は困難になり、ましてや海外共同研究者の招へいなど、とうてい計画できない状況となった。だが、京都大学における新出史料の会読については、4月から速やかにオンライン会議システムを導入し、活動を継続することができた。また研究報告も、対面での開催を断念してオンラインに切り替え、予定していた発表・討議を行った。海外からの招へいに関しても、共同研究者の加わった国際会議や、定期的な研究会をオンラインで開催することを通じて、意見交換の場を確保している。 2020年度の前半期ごろまでは、感染症の流行がここまで長期化することは予期できず、流行の収束まで研究活動の一部を順延する道を選んだため、プロジェクトの進展が一時的に滞ったのは否めない。だが後半期以降は、積極的にオンラインを活用する方針に切り替え、会読や研究報告を推進した。オンラインでの意見交換は、対面に比して活発さに欠けるきらいがあるものの、遠方からも常時参加できるという点で大きなメリットがある。オンライン導入以降、毎週の新史料会読には日本各地の研究者はもちろん、中国・韓国からの参加も増えている。時差の関係で、欧米の共同研究者との意見交換には制限があるものの、中国・韓国との学術交流は以前よりも格段に活性化しているといってよい。これにより、総体的には「おおむね順調に進展している」ものと自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
まず次年度も今年度と同様に、新出史料の会読を進めてゆく。人文研における毎週の研究会のほか、2020年度より開始した、中国・武漢大学、韓国・ソウル大学、および京都大学による、三大学共催の研究会「戦国秦漢簡牘在線研読会」を3ヶ月に一度のペースで継続し、ここでも関連する問題を討議する。こうした、オンラインの活用による国際的協業体制の下に、引き続き岳麓簡の秦律令を読み進め、訳注を作成し、それを『東方学報』誌上に掲載する予定である。 各自の研究テーマについての研究報告も、同様にオンラインで行ってゆく。上述した三校共催のオンライン研究会も活用して、相互に意見を交換し、各自の研究課題をより深く掘り下げてゆく。時差の問題で参加が難しい欧米の共同研究者には、翻訳した議事録の配布により、問題意識の共有を図る。併せて、段階的に得られた研究成果を翻訳し、広く発信してゆく活動にも、さらに注力してゆく。 当初の計画では、2021年度に中国で国際シンポジウムを開催し、本プロジェクトの中間報告とする予定であったが、海外渡航が困難な状況が続いており、年度内の実行はすでに見送った。これについてはオンラインでの開催も視野に入れて、柔軟に対応してゆきたい。
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Research Products
(19 results)