2019 Fiscal Year Annual Research Report
南宋・洪邁『夷堅志』の史的研究活用に向けた史料性及び全容の解明と情報ツールの構築
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19H01325
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
須江 隆 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (90297797)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡辺 健哉 大阪市立大学, 大学院文学研究科, 准教授 (60419984)
藤本 猛 清泉女子大学, 文学部, 准教授 (50757408)
高橋 亨 東北大学, 文学研究科, 専門研究員 (20712219)
梅村 尚樹 日本大学, 生物資源科学部, 研究員 (40847084)
津田 資久 国士舘大学, 文学部, 講師 (60407195)
小島 浩之 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 講師 (70334224)
江川 式部 明治大学, 研究・知財戦略機構, 研究推進員 (70468825)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 夷堅志 / 南宋 / 洪邁 / 史料論 / 史料活用 / 訳注 / 中国近世社会 / 国際共同研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は南宋時代の筆記史料『夷堅志』に着目し、その史料性及び全容の解明と、史的研究への活用の便をはかるための情報ツールの構築を、国際的共同研究のもとで推進すること目的としている。具体的には、「①中国近世社会の日常性や生活文化の実態を解明して現実を見つめ直すために、『夷堅志』を如何に史的研究に活用すべきなのか、②どうしたら『夷堅志』活用の便をはかれるのか、③内外で関心が高い『夷堅志』を国際的共同研究として推進するためにはどうすべきなのか」の3つを研究課題の核心をなす学術的「問い」と設定し、その問いに応えるべき成果の達成を目指している。本年度は研究実施計画の初年度であったので、研究全体の準備期間に当て、研究内容の打合せと各研究者の作業分担の決定に重点を置きつつ、各研究者が上記目的の達成に向けた作業に従事した。研究実績の具体的概要は以下の通り。 ア)『夷堅志』の史料性解明:各研究者に逸話を2話づつ割り当て、史的研究活用に資するための分析作業を実施した。分析に不可欠な比較・照合用の史料については、各研究者が、各大学等機関で蒐集・複写した他、「中国前近代史関係図書」を新規購入して作業を進めた。 イ)『夷堅志』の後世への受容の実態解明:国内の複数の大学等機関にて、『夷堅志』各版本の所在と内容の調査・分析を、主として熊本崇、渡辺健哉、高橋亨が行った。 ウ)現代的意義を有する史的研究成果の呈示と全容解明に向けた取り組み:上記ア)の作業と連動させ、各研究者が各逸話の訳注稿を作成する作業と、キーワード抽出による一覧表作成作業に従事した。 エ)情報ツールの整備・公開:各研究者の上記の作業内容を検討し、個々の成果を精緻化するために、研究打合せの全体会議を日本大学と東京大学で開催した オ)国際共同研究プロジェクトの構築:洪性珉が韓国における『夷堅志』研究の動向を調査し、研究文献目録を作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実施計画の初年度として、研究全体の準備期間に当て、研究内容の打合せと各研究者の作業分担の決定に重点を置くとした当初の目的については、充分に達成できたと評価できる。 但し当初の研究実施計画では、初年度においても、『夷堅支甲志』所収の逸話の分析を、各研究者が5話程度づつ担当することになっていたが、全体会議での検討作業を進めた結果、各逸話の分析をより深化させる必要性を各自が痛感し、実際には各自の分析作業が2話程度に止まってしまった。この点は当初予期していなかったとはいえ、『夷堅志』所収の逸話の史的研究活用に向けた便をはかるためには、むしろより有効な手段となったため、かえって新たな知見を生むことになったと自負している。 一方各研究者は、『夷堅志』の各逸話を史的研究活用に資するための分析作業を進めるにあたって、多様な分野の研究活動を展開して成果を公表し得た。この点は大いに評価できるが、反面、研究実施の初年度であったとはいえ、史的研究への活用の便をはかるための逸話の訳注稿や一覧表に関わる成果を公表するには至れなかった。 以上の通り、本研究課題の現在までの進捗状況については、遅れがある反面、計画通りの実績を上げたり、新たな知見を得られたりすることもできたため、「やや遅れている」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究作業の遂行により、『夷堅志』所収の逸話の分析については、時間をかけてより深化させる必要が生じた。そこで各研究者が分析を分担する逸話の数を当初の計画よりも減らし、各自がその作業を進めていくこととする。この緻密な分析作業により、同書所収の逸話の史的研究活用に向けた便がより有効にはかれることになる。 また次年度以降は、『夷堅志』所収の逸話の訳注稿や一覧表に関わる成果を積極的かつ段階的に公表していくことに重点を置いていく。そのための方策として、各研究者が一同に会する全体会議を、東京大学等で最低でも4回開催し、各研究者の研究作業の成果を検討する機会を設定する所存である。 一方、情報ツールの公開に向けた作業にも積極的に取り組んでいくために、国際共同研究の一貫として、次年度は海外の研究者の招聘と国際ワークショップの開催を企画し、海外の『夷堅志』研究の動向や文献リスト等の公開に関しても視野に入れていく。
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Research Products
(28 results)