2020 Fiscal Year Annual Research Report
国家形成前段階における親族構造の地域的変異に関する研究ー九州南部を中心に―
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19H01342
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
岩永 省三 九州大学, 総合研究博物館, 教授 (40150065)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉村 和昭 奈良県立橿原考古学研究所, 企画学芸部学芸課, 課長 (10250375)
高椋 浩史 九州大学, アジア埋蔵文化財研究センター, 学術研究者 (10759418)
石田 智子 鹿児島大学, 法文教育学域法文学系, 准教授 (40624359)
米元 史織 九州大学, 総合研究博物館, 助教 (40757605)
辻田 淳一郎 九州大学, 人文科学研究院, 准教授 (50372751)
舟橋 京子 (石川京子) 九州大学, 比較社会文化研究院, 准教授 (80617879)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 国家形成 / 親族構造 / 九州南部 / 形質人類学 / 考古学 / 地下式横穴墓 / 地下式板石積石室墓 / 古人骨 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、国家形成前段階における親族構造変動の地域的偏差の実態を、九州南部地域出土の古人骨資料の形質人類学的研究に基づいて明らかにするとともに、考古学的研究により、当該地域の集団の社会的地位や財の継承方法、集団の階層分化の様相も明らかにし、当該地域が律令国家に編入される前の社会組織の水準を明らかにすることである。当該地位では、古墳時代において地下式横穴墓などの非高塚墓制が盛行した。当該地域の集団は、5世紀までと異なり6世紀以降、高塚と地下式横穴墓が混在する平野部を除いて、しだいに高塚造営地域との文化的交流が疎となり、後に隼人と呼ばれた異文化集団が成立し、社会組織や統合の在り方が高塚古墳造営地域と懸隔が大きくなっていく。その様相・プロセスを明らかにすべく、以下の研究を実施した。 南九州地域の非高塚古墳造営集団の親族組織の事態解明のため、地下式横穴墓出土人骨資料の考古学的・形質人類学的情報を収集・総合するとともに、今後得られる成果との比較研究に備え、視野を広く設定し、九州大学総合研究博物館および九州大学比較社会文化研究院所蔵の、主として九州地方出土の古墳時代人骨資料(非高塚古墳・高塚古墳含む)の整理・調査・報告を実施し、九州地域の古墳時代集団の形質的特徴全般を再検討した。特に南九州地域と他地域との比較検討のために、頭蓋骨の地域差・時代差の詳細な情報を得るため、3Dスキャナーを用いて頭蓋骨の3次元データの収集を行うとともに、大容量のワークステーションを導入して3次元データの解析を実施した。 南九州地域の古墳時代社会の様相の相対化のために、日本列島の周辺地域、具体的には、西北九州地域・北関東地域の古墳時代文化との比較研究を進めた。あるいは発展段階的に比較可能な外国地域の文化、具体的にはブリテン諸島の鉄器時代後期文化との比較研究を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
◎人骨資料を出土した地下式横穴墓に関わる考古学的・人類学的情報を研究に使用できる水準まで統合・整理する作業のうち、他機関あるいは現地での資料調査は新型コロナウイルス感染症のため実施できなかったため、以下の作業に切り替えた。 〇宮崎県えびの市島内地下式横穴墓群は、多くの人骨が出土したが、墓の中での被葬者の取り扱い、埋葬間隔が未検討で、埋葬順位や副葬品の被葬者への帰属の検討が不十分であったため、同地下式横穴墓群出土の人骨の埋葬状況、特に埋葬の順序や片付けの状況、副葬品と人骨の関係などを実測図と写真を照らし合わせて復元する作業を若干進めた。〇地下式横穴墓・高塚古墳から出土した人骨資料の形質人類学的研究については、文献からの計測データ収集を進め、九州地域の古墳時代集団の形質的特徴、特に四肢骨形態についてまとめる作業を実施した。また、南九州地域の古墳時代人骨について今後得られる成果との比較研究に備え、九州大学総合研究博物館・比較社会文化研究院所蔵の古墳時代人骨資料の整理・調査・報告を実施した。また、3Dスキャナーを用いて頭蓋骨の3次元データの収集を行い、3次元データの解析のために大容量のワークステーションを購入し、解析を実施した。九大所蔵人骨の再検討は今後も継続する。古墳時代横穴墓における改葬行為に関する研究を実施した。〇南九州地域の古墳時代社会の様相の相対化のために、日本列島の周辺地域、具体的には、西北九州地域・北関東地域の古墳時代文化との比較研究を進めた。あるいは発展段階的に比較可能な外国地域の分化、具体的にはブリテン諸島の鉄器時代後期文化との比較研究を進めた。 ◎2021年度には、現地調査を再開し、本年度に実施した上記関連調査の成果と総合する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
◎人骨資料を出土した地下式横穴墓に関わる考古学的・人類学的情報を研究に利用できる水準まで統合・整理する作業の遅れを取り戻す。えびの市島内地下式横穴墓群の未分析資料について、人骨の埋葬状況、埋葬の順序や片付けの状況、副葬品と人骨の関係などを実測図と写真を照らし合わせて復元する作業を進め、墓の中での被葬者の取り扱い、埋葬間隔、埋葬順位や副葬品の被葬者への帰属の検討を進める。この種の作業を他の地下式横穴墓群出土人骨についても大幅に進める。 ◎地下式横穴墓から出土した人骨資料の形質人類学的研究を進める。〇親族構造復原の基礎としての歯冠計測による血縁者推定を、島内地下式横穴墓出土人骨および他の地下式横穴墓出土人骨についても大幅に進める。〇身体活動の復元のための筋付着部の発達度分析を島内地下式横穴墓出土人骨および他の地下式横穴墓出土人骨について大幅に進める。〇性別や年齢および生活水準・栄養状態を示すストレスマーカーの検討(エナメル質減形成やクリブラ・オルビタリア、骨膜炎)を島内地下式横穴墓出土人骨および他の地下式横穴墓出土人骨について大幅に進めることで、骨にあらわれる被葬者の生前の生活・栄養状況の特徴を明らかにする。 ◎墳墓群および集落の内部構造の分析、あるいは個々の墳墓や住居址からの出土品の考古学的検討を進める。地下式横穴墓について墓ごとに副葬品と被葬者の関係を確定し墓の代表者の認定を行う。墓群内での墓群の階層構造の分析、墓群内での群構造の分析を進め、さらに単一の墓群だけでなく、墓群間、地域を越えた地下式横穴墓群の比較分析を進める。 ◎以上の形質人類学的検討と考古学的検討を総合して、形質的特徴と副葬品や埋葬順序などの被葬者の属性との相関から社会的地位との関連を明らかにし、各集団の親族構造や階層構造を明らかにするための具体的作業を行う。 ◎各分担者の研究成果を学会ないし論文で発表する。
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Research Products
(10 results)