2020 Fiscal Year Annual Research Report
南米アンデスの初期帝国ワリの成立と地方支配に関する研究
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19H01396
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
渡部 森哉 南山大学, 人文学部, 教授 (00434605)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長岡 朋人 青森公立大学, 経営経済学部, 准教授 (20360216)
澤藤 りかい 総合研究大学院大学, 先導科学研究科, 日本学術振興会特別研究員(CPD) (50814612)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 考古学 / アンデス / 国家 / 人骨 / DNA / ワリ |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者は2020年4月から5月にかけてペルーに滞在し、テルレン=ラ・ボンバ遺跡の第一次発掘調査の出土土器を分析した。その後、現地の考古学者が土器の図面作成を進めた。また、同遺跡が位置するペルー北部高地のヘケテペケ川流域の20世紀半ばの航空写真を購入し、それを基に図面作成を行った。同遺跡の一部が破壊されていることを確認し、破壊前の範囲と大まかな構造を確認し、今後の発掘の方針を決定した。さらに、テルレン=ラ・ボンバ遺跡はワリ帝国期の時代の遺跡であるが、ワリ帝国の首都であるワリ遺跡の正確な図面が存在しないため、同様に20世紀半ばの写真を購入し、それを基に図面作成を行った。これは地方の遺跡と比較する基準となる。 研究分担者の長岡は、ペルー、パコパンパ遺跡から2015年に発見された紀元前700年頃貴人墓の報告を行った。パコパンパ遺跡は,ペルーの北部高地,カハマルカ県チョタ郡に位置する形成期の祭祀遺跡である。被葬者は2体おり,北側被葬者は中年女性と推定され,後頭部が扁平であるため人工頭蓋変形の可能性が高かった。一方,南側被葬者は15歳程度の男性であると推定された。2体の人骨とも齲歯は皆無であり,本遺跡から出土した非エリートの齲歯率(男性21.0%,女性18.0%)と比べて低頻度であった。この結果は形成期における齲歯率の階層差を示唆するものである。齲歯率や生前喪失歯率には階層差(階層が高いほど割合が低い)があり、階層が高い人骨には人工頭蓋変形が施されていた。 研究分担者の澤藤はエル・パラシオ遺跡の出土人骨に付着していた歯石について、特に歯石が豊富に付着していた5個体から歯石を採取しDabney法(Dabney et al. 2013)によりDNA抽出を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年、2021年に予定していたテルレン=ラ・ボンバ遺跡の第二次発掘調査を実施することができなかった。またペルーに渡航して追加の人骨サンプルの持ち出し手続きをする予定であったが未了である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究代表者は2022年8月から9月にかけて、ペルーに渡航しテルレン=ラ・ボンバ遺跡の第二次発掘調査を実施する予定である。また年代測定用の資料の持ち出し手続きを進める。2023年3月にペルーに渡航し、発掘資料の整理と分析を行う。 研究分担者の長岡は2022年8~9月と2023年2~3月に他研究機関所蔵の古人骨のデータ収集にいき、分析データに加える予定である。 研究分担者の澤藤は、2022年度中に得られたDNAのライブラリ作成を行い、シーケンスを行う予定である。得られたDNA配列について、細菌叢解析を行うと共に病原体の分析・食物分析を行い、同遺跡における人間集団の多様性を把握する。
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