2020 Fiscal Year Annual Research Report
萌芽期における日本の国際私法ー穂積文書の検討を中心として
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19H01416
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
竹下 啓介 一橋大学, 大学院法学研究科, 教授 (60313053)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
櫻田 嘉章 甲南大学, 法学(政治学)研究科(研究院), みなし専任教員 (10109407)
道垣内 正人 早稲田大学, 法学学術院(法務研究科・法務教育研究センター), 教授 (70114577)
北澤 安紀 慶應義塾大学, 法学部(三田), 教授 (70286615)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 国際私法 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度研究においては、手書きで書かれた穂積文書を翻刻したもの及びその内容を紹介したものを出版することを目標として、前年度研究から継続して、穂積文書の研究及び内容の確認のための作業を行った。 具体的には、現在残されている穂積文書(「法例草案ニ就テ」と題された資料、第1号、第4号、第5号、第7号、第8号、第9号、第10号、第11号、第12号、第14号、第15号、第16号、第18号の各号の資料)について、崩し字解読の専門家が翻刻した文字データを国際私法学の専門家である研究メンバーの視点から分析し、内容を確認する作業を行った。例えば、穂積文書の中の外国法調査結果の記述について、翻刻の専門家が解読困難との記号を付した文字を明らかにするために、可能な範囲で当時参照されたと思われる文献等の調査し、合理的な推測により文字が何であったかを明らかにする作業を行ったり、穂積文書中の外国語の記載について、その内容を明らかにする検討を行った。 また、ハーグ国際私法会議への日本の加盟に関する資料についても、検討を開始した。具体的には、未だ活字化されていない日本の外交史料について整理して、崩し字解読の専門家に翻刻作業を依頼し、活字化を進めると共に、その内容について、国際私法の専門的見地から確認する作業を行った。 コロナ禍の影響を受けての研究期間の延長(令和2年度研究は、令和4年3月末に完了)が認められたため、上記のとおり、当初の最低限の目標であった穂積文書の出版準備作業については、おおむね完了させることができた。また、そのような準備作業の中で、法例の立法に関する新たな発見もあり、今後の論文執筆の準備も行うことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍の影響で十分な研究時間の確保等が難しい時期もあり、研究全体における進捗状況としては、やや遅れている状況である。 研究期間の延長が認められたため、令和2年度研究としての最低限の目標である手書きの穂積文書を翻刻した書籍の出版準備作業については、おおむね完了することができたが、出版のためになお検討すべき点が若干残っている状況である。また、これらの分析を踏まえた論文執筆についても、着手の段階であり、成果として公表するには至っていない。 また、特に令和2年を中心に、コロナ禍の影響で海外渡航が困難であったことから、当初、令和2年度研究としても予定していた海外調査を行うことができなかった。そのため、ハーグ国際私法会議への日本の加盟の経緯に関する研究についても、オランダ公文書館に所蔵されていると思われる史料の分析等を行うことができず、研究は遅れている状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究は全体としてやや遅れている状況ではあるが、最低限、手書きの穂積文書を翻刻した文字データを史料として出版するという研究成果を達成すべく、その点に注力して今後研究を進める予定である。このような史料を出版することができれば、今後史料を利用した理論的な研究・分析が本研究のメンバー以外にも可能となるはずであり、これは日本の国際私法学会に対する大きな学術的貢献となると考えられる。 また、ハーグ国際私法会議への日本の加盟についても、海外出張の調整が可能となった段階で、できる限り早くオランダ公文書館等の調査を行うことで、最低限、基礎資料を揃え、一般的な分析を行うことで、今後の研究・分析の土台となる史料をまとめた文献の作成に注力する。 以上のように、史料の収集・分析を最低限の目標とすることで、日本の国際私法学に対して貢献することを目標に、研究を推進する予定である。
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